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セルメチニブ、米国で神経線維腫症I型の画期的治療薬として指定-英AZと米メルク

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2019年04月10日 PM12:45

3,000~4,000人に1人の割合で罹患する難治性の遺伝性希少疾患

英アストラゼネカと米メルク社は4月1日、MEK1/2阻害剤であるセルメチニブが、)より、神経線維腫症I型()に対する画期的治療薬に指定されたと発表した。

今回の指定は、神経線維腫症に関連する進行・手術不能な叢状神経線維腫(PNs)を有する3歳以上のNF1患者を対象としている。NF1は3,000~4,000人に1人の割合で罹患する難治性の遺伝性希少疾患。NF1遺伝子の自発的あるいは遺伝的変異により発症し、皮膚上下の柔らかい塊(皮下神経線維腫)、皮膚色素沈着(カフェ・オ・レ斑)、および患者の20~25%にみられる神経鞘の腫瘍(叢状神経線維腫)を含む、多くの症状を伴う。これらの叢状神経線維腫は、疼痛、運動機能障害、気道機能不全、腸や膀胱の機能不全や閉塞などの病的状態を引き起こすとともに、悪性腫瘍(悪性末梢神経鞘腫瘍)に転換する可能性がある。

NF1患者は、学習障害、視覚障害、脊椎の捻転および湾曲、高血圧およびてんかん等の多くの他の合併症を発症する可能性もある。また、悪性脳腫瘍および悪性末梢神経腫瘍、および白血病を含む他のがんを発症するリスクが増加している。症状はさまざまな重症度において幼少期に始まり、平均余命を最長15年短縮する可能性がある。

MEK酵素の阻害が、腫瘍増殖の抑制につながる可能性

セルメチニブはMEK1/2阻害剤であり、2003年にArray BioPharma Inc.からアストラゼネカに導出された薬剤。2017年に両社は、セルメチニブの共同開発・共同商業化契約を締結した。NF1遺伝子はニューロフィブロミンと呼ばれる、RAS/MAPK経路を抑制的にコントロールして、細胞の増殖や分化、生存機能を制御する働きをするタンパク質の形成に関係している。NF1遺伝子の変異によりRAS/RAF/MEK/ERKシグナル伝達に異常が起こり、細胞が過剰に増殖・分裂し、腫瘍の増殖につながる。セルメチニブはこの経路で機能するMEK酵素を阻害することで、腫瘍の増殖を抑える可能性がある。現在、セルメチニブの単独投与及び他の治療との併用で評価する試験が進行中だ。

今回の指定は、3歳以上のNF1に関連する進行・手術不能なPNsを有する小児患者を対象にセルメチニブ単剤の経口投与を行った、第2相SPRINT試験のデータに基づいたもの。同試験結果は、米国国立がん研究所(NCI)が、2018年の米国臨床腫瘍学会年次総会において発表済みである。

なお、セルメチニブは希少疾病用医薬品としても2018年2月に米国食品医薬品局(FDA)から、同年8月に欧州医薬品庁からNF1の治療薬として指定を付与されている。

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