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小児に負担が少ない川崎病の新たな治療法を開発-和歌山医科大

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2019年04月08日 AM11:45

大量免疫グロブリンによる標準治療をシクロスポリンで強化

和歌山県立医科大学は3月29日、小児期の後天性心臓病の最大原因となる川崎病に対する、大量免疫グロブリン(IVIG)による標準治療をシクロスポリン()で強化した新たな治療法を開発したと発表した。この研究は、同大小児科の鈴木啓之教授、千葉大学大学院医学研究院公衆衛生学の羽田明教授、尾内善広准教授、医学部附属病院臨床試験部の花岡英紀教授、東京女子医科大学八千代医療センター小児科の濱田洋通臨床教授らの研究グループによるもの。この研究成果は英国科学誌「Lancet」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

川崎病は、小児に多い全身の血管に炎症を起こす原因不明の病気で、発熱や発疹などの症状を呈する。現在日本では、年間1万5千人以上が川崎病を発症している。多くは治療により症状が治まるが、重症例では心臓の栄養血管である冠動脈に、心筋梗塞による死亡の原因にもなりうる瘤(りゅう)などの病変が形成され、生涯にわたる後遺症となることがある。

一般的な治療としては、IVIGとアスピリンの内服による標準治療が有効だが、患児の10~15%はこの治療に十分反応せず(IVIG不応)、冠動脈病変形成のリスクが高くなるという。川崎病の原因は依然として不明だが、ゲノム研究により川崎病の発症と重症化に関わる遺伝的素因が明らかになりつつあった。

少量の液状内服薬を5日間服用するのみの、負担の少ない治療法

今回の研究に先立ち、同研究グループが行った遺伝的素因の研究から、川崎病が発症、重症化するメカニズムにITPKCとCASP3という遺伝子のバリアント(ヒト集団内でみられる多様性)が関わることが判明していた。以前からネフローゼ症候群などの治療に使われていたCsAには、そのメカニズムを抑える作用がある。CsAは重症化を抑制する切り札となり得ると考え、CsAの使用経験が豊富な小児科医が中心となって、重症川崎病患者にCsAを使った臨床試験を計画した。

この試験は小児領域では希少な医師主導治験。北海道から沖縄まで全国22施設の臨床経験豊富な小児科医と、臨床研究中核病院である千葉大学病院のARO部門臨床試験部が連携し、2年間かけて医師主導治験を展開した(KAICA Trial)。同試験には医療機関で川崎病と診断された主に0~1歳児1,815名のうち、臨床試験の基準に適合し保護者の同意を得た175名が協力。厚労省への承認申請を目的として薬機法()下で実施され、データの品質管理や効果安全性委員会、心エコー判定委員会など第三者による検証作業も行われた。

試験の結果、標準治療をCsAで強化することにより、冠動脈病変発生リスクを0.46倍に抑制。発熱もCsA強化療法で、より早く治まったという。また、CsAと標準治療との間に安全性の大きな違いはなかった。

CsAによる強化療法は、少量の液状内服薬を5日間服用するのみの小児に負担の少ない治療であり、薬剤も高価ではなく、治療による入院期間の延長もないという。現在研究グループは、保険適用の認可申請準備を進めている。

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