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院外心停止患者に対する救急隊による高度気道確保の有効性が明らかに-阪大

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2019年03月08日 PM12:45

高度気道確保が行われた時刻に着目、解析法を見直し

大阪大学は3月1日、高度気道確保の新たな解析手法である「時間依存傾向スコア連続マッチング解析法」を用いて、院外心停止患者に対する救急隊による高度気道確保の重要性を明らかにする研究結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の小向翔助教(医学統計学)、北村哲久助教(環境医学)と、米ピッツバーグ大学の井澤純一リサーチフェロー(集中治療学講座)らの研究グループによるもの。研究成果は、英医師会雑誌「BMJ」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

病院外で心停止を起こした患者に対して救急隊は、胸骨圧迫などの心肺蘇生行為や、(体外式自動除細動器)を用いた電気ショックなどの1次救命処置だけでなく、自己心拍再開が達成できない心停止患者に対しては、声門上気道確保器具や気管挿管チューブを用いた高度気道確保や、静脈路からのアドレナリン投与といった2次救命処置を行う。しかし、これまで心停止患者に対する酸素供給のための声門上気道確保器具や、気管挿管チューブを用いた高度気道確保の効果を評価する研究は数多くあったものの、院外心停止患者に対する高度気道確保の有効性を示す研究はほとんどなく、その有効性については十分明らかにされていなかった。

これまで、傾向スコアマッチング解析などを用いたいくつかの調査研究で「院外心停止における救急隊による高度気道確保は有効でない」ということが示唆されていたが、同研究グループは高度気道確保が行われた時刻に着目。改めて解析方法の見直しを検討した。

電気ショック適応外で、高度気道確保で生存の可能性高まる

今回研究グループは、新たな解析手法である「時間依存傾向スコア連続マッチング解析法」を用いて、総務省消防庁の全国院外心停止患者登録データの検討を行った。時間依存傾向スコア連続マッチング解析法は、高度気道確保された時間ごと(1分毎)に傾向スコアを算出し、同じタイミングで高度気道確保された群とまだされていない群をマッチさせることで、蘇生時間バイアスを減らそうという手法だ。また、心停止患者の心電図波形により心室細動がある場合、電気ショックの適応が判断されるが、電気ショックの有無により、その後の救急隊の蘇生処置が異なるために、分けて解析を行った。なお、解析対象となる日本の成人院外心停止患者は31万620名で、電気ショック適応である心停止群の41.2%、また電気ショック適応でない心停止群の42.0%が、高度気道確保を受けていた。

電気ショックの適応がある群において、通常のオリジナルコホート解析ならびに従来の傾向スコアマッチング解析では、高度気道確保を受けた群の方が受けなかった群に比べて1か月後生存率が有意に低い結果だったのに対し、時間依存傾向スコア連続マッチング解析では、1か月後の生存率に差は見られなかった。一方、電気ショックの適応がない群においては、従来の解析では、高度気道確保を受けた群の方が受けなかった群に比べ、1か月後の生存率は有意に低かったのに対し、時間依存傾向スコア連続マッチング解析では、高度気道確保を受けた群の方が院外心停止1か月後の生存率は有意に良好だった。

これらの結果から、救急隊到着時の1次救命処置により自己心拍が再開しなかった心停止患者のうち、電気ショックを適応できなかった場合に高度気道確保を行うことが、1か月後の生存の改善に関連し、有意に生存の可能性が高まることが明らかになった。

今回の研究により、院外心停止患者に対する救急隊による救命処置の重要性が明らかになった。研究グループは「救急隊による病院前救護活動の一つである、高度気道確保の有効性を示す本研究結果は、院外心停止患者に対する救急隊による2次救命処置の重要性を明らかにするとともに、院外心停止患者の蘇生率向上のためのエビデンスとして国際心肺蘇生ガイドラインの改定にも大きな影響を与えると考えられる」と、述べている。

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