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小児期Leigh脳症の新規病因遺伝子としてPTCD3遺伝子を同定-千葉県こども病院ら

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2019年02月06日 PM12:15

多岐に渡るミトコンドリア病「」の原因

千葉県こども病院は2月4日、Leigh脳症を呈した患者において、PTCD3遺伝子(別名 MRPS39)を新しい病因遺伝子として同定したと発表した。この研究は、同院遺伝診療センター・代謝科/千葉県がんセンター研究所の研究グループが、埼玉医科大学小児科、順天堂大学難病の診断と治療研究センターと共同で行ったもの。研究成果は、論文誌「Neurogenetics」電子版に1月3日付で掲載された。


画像はリリースより

研究グループは、2007年から希少難病であるミトコンドリア病の生化学診断と遺伝子診断に取り組んできた。ミトコンドリア病の原因は多岐に渡っており、ゲノム解析により新規病因遺伝子を見つけ、その結果を病態解明や創薬への展開につなげていくことが喫緊の課題となっている。

Leigh脳症は、ミトコンドリア病のひとつの病型で、頭部の画像所見で基底核、脳幹部に左右対称性壊死性病変をきたす特徴がある。多くは乳幼児期に発症し、知的退行、筋緊張低下、けいれん発作など進行性の神経変性症状を示す。これまでに、75以上の原因遺伝子が見つかっている。そのうちの約20%がミトコンドリア遺伝子変異によるもので、それ以外は核遺伝子変異であると知られている。

PTCD3機能異常はミトコンドリア機能低下を惹起

今回研究グループは、低出生体重、成長障害、ミオクローヌス、ミトコンドリア脳症を呈した症例に対し、包括的遺伝子解析(全エクソーム解析、)、および候補遺伝子の機能解析を実施。結果、これまでLeigh脳症の原因遺伝子として報告のなかった「PTCD3遺伝子」を新たな原因遺伝子として同定した。PTCD3遺伝子異常は、ミトコンドリアタンパク質翻訳異常を介して、ミトコンドリア呼吸鎖複合体機能低下を引き起こし、さらに低出生体重、発達遅滞、ミオクローヌス、ミトコンドリア脳症などの症状に結びついていた。

まず、全エクソーム解析で、PTCD3遺伝子のフレームシフトを起こす挿入とスプライシング異常(7番目のエクソンのスキップ)を起こす1塩基置換が同定された。PTCD3はスモールサブユニットのひとつの構成因子として報告されている。実際にスモールサブユニットの形成とミトコンドリアタンパク質の翻訳をウエスタン・ブロッティングで調べたところ、患者細胞ではサブユニットの形成と翻訳は優位に低下していた。次にプロテオーム解析を用いて、ミトコンドリアタンパク質の網羅的な変化を明らかにした。結果、ミトコンドリア・リボソーム・スモールサブユニットおよび呼吸鎖複合体Ⅰ、Ⅲ、Ⅳが減少(選択的に分解)していることが判明した。ラージサブユニットや呼吸鎖複合体II、Vは正常だった。

今回の研究成果は、遺伝子診断システムに還元することで、診断率の向上が期待される。また、今回プロテオーム解析が大きな力を発揮し、分子機序の解明に大きな役割を果たしたため、この分析系を新たな原因遺伝子発見にも役立てることが可能と考えると研究グループは述べている。

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