医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > IL13Rα2が血管新生を介して悪性黒色腫を進展させるメカニズムを解明-東京医歯大ら

IL13Rα2が血管新生を介して悪性黒色腫を進展させるメカニズムを解明-東京医歯大ら

読了時間:約 2分54秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年02月06日 PM12:45

IL13Rα2を悪性黒色腫の新規バイオマーカーとして同定

東京医科歯科大学は2月4日、・難治がんである悪性黒色腫(メラノーマ)の患者の一部で高発現するインターロイキン13受容体α2()が、がん細胞の増殖に必要な新たな血管の形成を誘導することで、腫瘍形成を進展させることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院 医歯学総合研究科 硬組織病態生化学分野(元東京薬科大学 生命科学部 腫瘍医科学研究室)の渡部徹郎教授と吉松康裕講師らの研究グループが、東京大学大学院医学系研究科 人体病理学・病理診断学分野の深山 正久教授、先進循環器病学寄付講座の藤生克仁特任准教授、分子予防医学分野の石川俊平教授(元東京医科歯科大学・ゲノム病理学分野)と共同で行ったもの。研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」オンライン版に発表されている。


画像はリリースより

悪性黒色腫は、皮膚がんの一種で、メラニン色素を産生するメラノサイトや母斑細胞ががん化したものだと考えられている。悪性度が非常に高く、早期から浸潤・転移が認められる難治がんだ。その治療は抗がん剤を用いた化学療法などが主流だが、副作用が問題視されている。分子標的治療薬の開発も進行中で、BRAF遺伝子を標的としたベムラフェニブ(vemurafenib)などが用いられているが、こちらも副作用が報告されており、新たな標的分子の同定ならびにがんの進展メカニズムの解明が求められている。しかし、悪性黒色腫に特異的に発現し、その進展に寄与する細胞表面抗原は同定されていなかった。

研究グループは、悪性黒色腫の新規がん抗原を同定するために、A375悪性黒色腫細胞に対する特異抗体を探索し、その抗原のひとつとしてインターロイキン13受容体α2(IL13Rα2)を同定。さらに、IL13Rα2の悪性黒色腫患者における発現パターンを検討するために、ティッシュマイクロアレイを用いて100例以上の病理標本を用いて免疫組織染色を行った結果、IL13Rα2が一部(約10%)の患者の腫瘍組織に発現していることを見出した。さらにIL13Rα2は正常組織では精巣にしか発現しないことが確認されたため、IL13Rα2は悪性黒色腫のがん細胞の細胞膜に発現する新規がんマーカーであることが明らかになった。

Amphiregulinの発現上昇を介して血管新生を亢進

研究グループは、IL13Rα2が悪性黒色腫の進展に果たす役割を検討するため、IL13Rα2を発現していないSK-MEL-28悪性黒色腫細胞にIL13Rα2を発現させて(IL13Rα2発現細胞)、発現していないSK-MEL-28細胞をコントロール細胞として、がん細胞の増殖ならびに腫瘍形成能を比較。その結果、培養細胞レベルではIL13Rα2発現細胞の増殖はコントロール細胞と比較して低かったが、免疫不全マウスの皮下に移植して形成される腫瘍の大きさを比較したところ、IL13Rα2発現細胞は腫瘍形成能が高くなるという結果が得られた。また、この作用はIL13Rα2を発現するA375悪性黒色腫細胞でIL13Rα2遺伝子を欠損させた場合でも同様に観察された。

さらに、IL13Rα2の腫瘍形成能に対する作用が血管新生を介している可能性を検討するために、悪性黒色腫細胞由来の腫瘍組織における血管新生を血管内皮細胞マーカーであるPECAM-1に対する抗体を用いて計測。その結果、IL13Rα2発現細胞由来の腫瘍組織における血管の量はコントロール細胞由来の腫瘍と比較して上昇していることが示された。そこで、IL13Rα2の発現により悪性黒色腫細胞において血管新生を誘導する因子を網羅的に探索し、Amphiregulinという上皮細胞増殖因子(EGF)ファミリーの因子の発現がIL13Rα2により誘導することを発見。さらに、悪性黒色腫細胞にAmphiregulinを発現させることで腫瘍形成能と血管新生能が上昇することを見出し、IL13Rα2が悪性黒色腫細胞における血管新生因子であるAmphiregulinの発現上昇を介して、血管新生を亢進させ、 腫瘍形成が上昇することが示唆された。

今回の研究結果により、IL13Rα2が悪性黒色腫の新規バイオマーカーとして有用であることが初めて明らかになった。IL13Rα2は、他のがん種(悪性神経膠腫や膵がんなど)でも発現していることから、細胞のがん化とともに発現が上昇するがんマーカーであると考えられる。研研究グループは、「IL13Rα2を発現した悪性黒色腫においては、Amphiregulinなどの血管新生因子の発現上昇を介して腫瘍形成が進展することが明らかとなったため、IL13Rα2の作用を阻害することで悪性黒色腫の進展を抑制できる可能性が開けた」と、述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 心臓線維化と拡張障害型心不全に関わる「メフリン」の分子メカニズム解明−名大ら
  • がんと精巣に共通の特異抗原CTAの過半数が、がん細胞の増殖と生存に関与-東北大
  • 視交叉上核の GABA が、睡眠・覚醒リズムの出力に関わることを明らかに-名大ら
  • 日本人における定型網膜色素変性の原因遺伝子とその変異を明らかに-九大ら
  • ピロリ菌除菌後胃がんの表層に出現する低異型度上皮が、がん由来と判明−広島大