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【速報】【ディオバン裁判】東京高裁 元社員、ノバルティス社への控訴を棄却

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2018年11月19日 PM04:38

一審の無罪判決を支持。「66条1項での対応は無理があり、新たな立法措置が必要」

アンジオテンシンII受容体拮抗系高血圧治療薬・(一般名:)を巡る医師主導の臨床研究でデータを改ざんしたとして、(現・)の第66条に基づく誇大記述・広告違反に問われたノバルティスファーマの元社員・白橋伸雄被告と同法両罰規定により起訴された法人としてのノバルティスファーマに対する控訴審判決で、東京高裁は11月19日午後、一審の無罪判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。


撮影:

同裁判の一審において、被告側は一貫して無罪を主張。2016年12月、検察側が白橋被告に懲役2年6か月、ノバルティスに罰金400万円を求刑していたが、2017年3月16日に行われた一審の判決公判で、東京地裁は両者に無罪の判決を言い渡し、これを不服とする検察側が控訴していた。

同裁判は、日本人の高リスク高血圧患者を対象にノバルティスのディオバンの上乗せによる心血管イベント発症抑制効果を比較検討した「Kyoto Heart Study(KHS、主任研究者:松原弘明・京都府立医科大学循環器内科教授)」の2つのサブ解析論文での不正について問われたもの。ノバルティス社員の白橋被告が統計解析を担当した際にディオバンを含む群に有利なデータ改ざんを行い、この論文を基にノバルティスが行ったプロモーションが薬事法(現・薬機法)第66条1項に定める「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」に違反するとして白橋被告が逮捕され、同法第90条に定める法人の監督責任に伴う両罰規定でノバルティスファーマも起訴された。

一審判決では、起訴事由となったKHS論文作成で、白橋被告がディオバンに有利になるイベント発生数改ざんを行っていたことは認定された。しかし、医薬品医療機器法の第66条で言及する「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布」は、(1)医薬品の購入意欲を喚起・昂進するもの、(2)特定医薬品の商品名の明示、(3)一般人が認知できる状態、の3要件すべてを満たすものと指摘。白橋被告がノバルティスに有利になるよう改ざんしたとされるKHS論文については、一般的な査読のある学術誌への掲載である以上、「購入意欲を喚起・昂進するもの」との要件を満たしているとは言い難いとして、第66条が規定する「広告」「記述」「流布」のいずれにも当たらず、違反とはならないとの判断を示していた。

これに対し、検察側は控訴理由で、一審判決は66条に規定する「広告」、「記述」、「流布」はいずれも並列の行為と規定しながら、「記述」「流布」も広義の「広告」とし、それをもとに顧客の誘引を構成要件とするのは法令適用の誤りであると指摘。所轄官庁の見解も引用しながら、「記述」、「流布」については顧客誘引が構成要件ではないと主張した。

また、一審の事実認定についても、ノバルティス側にはKHS論文の執筆、投稿には明確な販促の意図があったとして、査読のある学術誌への掲載という外形的な事実のみで「広告」に当たらないとするのは事実誤認であるとも主張していた。

控訴審判決では、66条に規定する「記述」、「流布」は、過去の立法経過や立法関係者の解説などから広義の広告の伝達手段を規定しているにすぎず、顧客誘引性は構成要件となると指摘。また、この顧客誘引性を「客観的顧客誘引手段」と「主観的誘引手段」とに分け、学術論文は客観的に顧客誘引性を有しておらず、論文を宣伝に用いようとしていた被告らの行為も顧客誘引の準備行為と言えるものの直接的に顧客誘引の意図があったとは認められないとした。

また、66条1項の規制に学術論文を認めた場合、論文内に不正確性などがあった場合は、その都度、故意の有無を問わねばならず、「学問の自由」への侵害ともなりかねないと指摘。虚偽の学術論文による宣伝行為に関しては「何らかの対応が必要だが、66条1項での対応は無理があり、新たな立法措置が必要」とした。(村上和巳)

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