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カブトガニ凝固因子の変異体を用いて、遷移状態のC*因子を捕らえることに成功-九大

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2018年06月12日 PM01:00

カブトガニの凝固反応の分子機構研究の一端を解明

九州大学は6月8日、タンパク質組換え体の技術で調製したカブトガニ凝固因子のひとつであるC因子の変異体を用いて、遷移状態のC*因子を捕らえることに成功したと発表した。この研究は、同大大学院理学研究院の柴田俊生助教、川畑俊一郎主幹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国際学術誌「The Journal of Biological Chemistry」のオンライン速報版で公開された。


画像はリリースより

グラム陰性菌の細胞壁成分であるリポ多糖()は、宿主の免疫系がグラム陰性菌を認識する際に標的となる物質。注射液や透析液へLPSが混入すると正常な免疫反応を誘導するが、反応が過剰になると発熱や多臓器不全、致死性のショック状態を引き起こすことがある。このLPSの医療用製品への混入検査には、C因子を含むカブトガニ血球の抽出液を材料にした検査試薬「」が世界中で利用されている。

他のタンパク質分解酵素前駆体の研究への応用にも期待

LPSで誘導されるカブトガニの体液凝固反応は、タンパク質分解酵素前駆体であるC因子と、B因子、凝固酵素前駆体、および凝固タンパク質のコアギュローゲンから成っている。これまで、細菌表面のLPSに結合したC因子は、不安定な中間状態である遷移状態のC*因子となり、C*因子同士が接近して活性型のα-C因子に変換されると推定されていた。この活性化の過程をタンパク質分解酵素前駆体の自己触媒的活性化という。しかし、自己触媒的活性化の重要なステージである遷移状態は不安的で寿命が短く、その実態を捕らえることはできなかった。

今回、C因子のSer触媒残基、F737部位、LPS結合領域などの種々のアミノ酸置換変異体を、HEK293変異株細胞を用いて調製。LPS存在下でのα-C因子への変換率をウェスタンブロットで比較定量するとともに、プロテアーゼ活性を測定した。その結果のひとつは、F737部位のPro置換体(F737P)がLPS存在下で切断を受けないままで、触媒Ser残基変異体(S941A)のF737部位を切断したことであり、LPSで誘導された活性型遷移状態(F737P*=C*因子)の存在を明確に示すものであるという。プロテアーゼ前駆体同士がある特殊な環境下で近接することで、遷移状態を経て自己触媒に活性化されると推定される例がC因子の他にも報告されており、今回の遷移状態を捕らえる研究手法は、自己触媒的活性化を介して活性化されると推定される他のタンパク質分解酵素前駆体の研究に応用されることが期待されるという。

今回の成果について、主幹教授である川畑氏は、プレスリリースで「私(川畑)の学生時代から約40年来の懸案であったC因子の遷移状態を捕まえることできました。それは、タンパク質組換え体の作成技術の進歩と若手研究者の精進の賜物です。ようやく、グラム陰性菌を高感度で検出できるC因子の初期反応の本質に近づくことができました」と述べている。

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