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通常の大腸がんとは異なるIBDからの発がん機構を解明-理研

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2017年12月18日 PM02:00

腸粘膜の慢性炎症によるがん「Colitic cancer」

理化学研究所は12月14日、炎症性腸疾患(IBD)から発生した大腸がん(Colitic cancer)の網羅的ゲノム解析を行い、その発がん機構を解明したと発表した。この研究は、理研統合生命医科学研究センターゲノムシーケンス解析研究チームの中川英刀チームリーダー、藤田征志研究員、兵庫医科大学炎症性腸疾患学外科部門の池内浩基教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、米科学雑誌「Oncotarget」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

日本での潰瘍性大腸炎やクローン病を含むIBDの患者数は、急激な増加傾向にあり、20万人以上が長期間の治療を受けている。IBD患者は腸粘膜の長期間にわたる慢性炎症のため、IBDを原因とするがん「Colitic cancer」の発生リスクが非常に高くなるとされ、IBD経過後に厳重な検診が行われている。また、がんや、その前がん病変(dysplasia)が見つかった場合、大腸全摘などの手術が行われる。

これまで、通常の大腸がんの発生メカニズムは詳しく解明されているが、Colitic cancerにはそのメカニズムが当てはまらないと考えられており、ゲノム解析による詳細な研究が求められていた。

APC遺伝子変異、Colitic cancerでは15%と少なく

今回の研究では、兵庫医科大学病院のIBD患者90例(58例、32例)に発生した、Colitic cancerの切除標本からDNAとRNAを抽出。(NGS)を用いて、網羅的ゲノム解析を行った。その結果、通常の大腸発がんにおいてはAPC遺伝子の変異が60~90%と最も多く起こっているが、Colitic cancerではAPCの変異が15%と少なく、TP53やRNF43の遺伝子変異がそれぞれ66%、11%ずつ検出され、通常の大腸がんとは異なる変異でがんが発生していることが判明。特に、RNF43の遺伝子変異はIBDの病悩期間や重症度と相関し、APC遺伝子の変異はIBDの病悩期間や重症度と逆相関していたという。

IBDと合併して発生した大腸がんであっても、通常の大腸がんと同様の経路で発がんするケースも存在すると考えられている。今回の結果は、、TP53の遺伝子変異を調べることで、発生したがんの原因がIBDかどうかを推定できる可能性を示している。また、Colitic cancerと通常の大腸がんとでは、背景で活性化しているシグナル経路/変異が異なるため、その分子情報、ゲノム情報によってIBDに合併した大腸がんの治療方針が変わってくることも考えられるという。

近年、NGSなどDNAシーケンス技術の革新により「ゲノムの病気」ともいえる、がんのさまざまなフェーズでの診断・分類を行う「がんゲノム医療」が進みつつある。研究グループは今後、IBDとColitic cancerの分野でも、APC、RNF43、TP53などのゲノム変異情報を用いて、dysplasiaの検出による早期診断や、Colitic cancerの層別化など、それに基づく治療方針の決定が行われていくものと期待できる、と述べている。

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