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介護施設での服薬指示逸脱事例、薬剤師の半数以上が把握

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2017年11月16日 PM04:00

第50回日本薬剤師会学術大会で田中秀和氏が発表

地域包括ケアの実現に向け、在宅医療が推進されている現在、薬剤師が在宅医療にかかわる局面が増えている。その中で介護施設や患者宅に薬剤を届けている薬剤師の6割超が、介護施設で医師による服薬指示を逸脱した服薬状況を把握していることがわかった。あい調剤薬局(長崎県五島市)の田中秀和氏が先ごろ開催された第50回日本薬剤師会学術大会で発表した。


田中秀和氏(長崎県五島市・あい調剤薬局)

田中氏らは、2017年3月15日~4月15日に日本在宅薬学会、全国薬剤師・在宅療養支援連絡会の会員である保険薬局勤務薬剤師とこれら薬剤師が担当する介護施設職員を対象としてWebアンケートを実施(研究は長崎県薬剤師会内設置倫理委員会にて承認取得)。薬剤師の回答数は159人で、調剤した薬剤を介護施設に届けた経験があったのは67.9%、同様に患者宅に届けた経験があるのは89.9%だった。それぞれに薬剤を届けた経験のある薬剤師のうち服薬指示を逸脱した用法を確認したことがあるのは介護施設が63.0%、患者宅が31.5%と、介護施設で服薬指示逸脱事例が多くみられることがわかった。

逸脱事例の内容(複数回答)を尋ねたところ、最多は「就寝前服用を夕食前後にした」で、逸脱事例全体に占める割合は介護施設が69.1%、患者宅が35.6%。次いで多かったのは「食前服用を食後にした」で、介護施設が47.1%、患者宅が26.7%、以下は「食後服用を空腹時あるいは食前にした」で介護施設が10.3%、患者宅が20.0%、「起床時服用を空腹時を除く朝食直前以降」で介護施設が1.5%、患者宅が4.4%などだった。

また、こうした服薬指示逸脱事例について、処方医の把握状況を回答薬剤師に尋ねたところ、介護施設での逸脱事例では「全て把握されており、容認されている」が38.2%、「把握・容認されているものもあるが、知らないものもある」が55.9%、「全て知らないと思われる」が1.5%、「わからない」が4.4%、また患者宅での逸脱事例ではそれぞれ順に55.6%、40.0%、0%、4.4%となっていた。

服薬指示逸脱の原因を薬剤師に尋ねたところ、介護施設に関しては施設の勤務形態を原因との回答が63.2%、患者宅に関しては介助を行う家族の生活様式が原因との回答が66.7%。薬剤師が服薬指示逸脱事例を確認した介護施設の利用者10人当たりの介護職員数について日中は4人未満、夜間は2名未満が多かった。なお、介護職員のアンケート回答は15人のみだったが、人員不足により服薬時間をずらした経験があったのはうち7人(46.7%)。服薬時間をどのようにずらしたかについてはやはり「就寝前服用を夕食前後にした」が最も多かった。

介護現場での人員不足が原因か。医療費増大につながる可能性も

田中氏は、特に就寝前服用が多い睡眠導入薬の場合、夕食後服用への逸脱により、深夜に自然覚醒が起こりやすく、この場合に医師が効果不十分として本来不要な鎮静剤などを追加投与する可能性があることも指摘。「これにより転倒・骨折のリスクが増大し、逆に医療費の増大につながる可能性がある」と懸念を表明した。

一方で、田中氏は少子高齢化の影響で介護保険料納付対象の40~64歳の人口は一時的に増加するものの、将来的にはこの年齢層も減少することで保険料収入も減少し、介護職員の賃上げの財源が減少すること、また介護職員の平均賃金・勤続年数は低短傾向で人手不足が深刻化していることなどの問題が顕在化していることを挙げ、介護施設での服薬指示逸脱改善について「理想的には介護職員の増加が望ましいが、社会保障費の増大抑制の観点からも困難と思われる。むしろ薬剤師が介入することで介護職員の負担を軽減できれば、介護職員のシフト調整に寄与し、服薬指示遵守に貢献する可能性がある」と指摘。より具体的には(1)薬剤特性と施設の状況に基づく提案、(2)短周期・定期的な介護職員薬育介入、を挙げた。

なお、今回は実際に服薬指示逸脱事例での具体的な薬剤などは調査していないが、今後その点も含めて調査を検討したいとの意向だ。(村上和巳)

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