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ダラツムマブが変える多発性骨髄腫の治療戦略

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2017年11月15日 PM04:00

ヤンセンファーマがメディアセミナーを開催

多発性骨髄腫患者の日本国内における5年相対生存率は36.4%で、新たに診断された患者の29%が診断から1年以内に死亡する。その治療薬として、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果とし、2017年9月に製造販売承認を取得した新薬が、ヤンセンファーマ株式会社のヒト抗CD38(R)点滴静注」(一般名:ダラツムマブ(遺伝子組み換え))だ。

ダラツムマブは、多発性骨髄腫を含む造血器腫瘍の腫瘍細胞表面に発現するCD38抗原に結合することにより、補体依存性細胞傷害(CDC)作用、抗体依存性細胞傷害()作用、抗体依存性細胞貪食()作用を介して抗腫瘍効果を示す。同剤は、2016年12月には厚生労働省から希少疾病用医薬品に指定されたこともあり、米国での2016年11月承認、欧州での2017年4月承認から時を置かずして日本での承認となった。

11月8日に都内で開催されたメディアセミナーで挨拶に立った、同社オンコロジー事業本部長の伊藤博夫氏は、「開発中にFDAから開発をもっと急ピッチで進めるよう強い要望を受けました」と語るなど、その高い医療ニーズがわかるエピソードを紹介。それに応えるべく、同社は承認を取得した9月27日以降、一定の条件のもと、薬価収載までの期間で患者に無償提供を行っている。「現在29名の患者が提供を受け、治療しています」(伊藤氏)

鈴木氏「多発性骨髄腫治療にルネサンスをもたらす薬剤」


日本赤十字社医療センター
骨髄腫アミロイドーシスセンター長 鈴木憲史氏

続いて、日本赤十字社医療センター 骨髄腫アミロイドーシスセンター長の鈴木憲史氏が講演を行った。

「ダラツムマブの登場で、多発性骨髄腫の治療戦略は大きく変わる。いわばルネサンスをもたらす薬剤」と鈴木氏。これまで(1)治癒を目指し再発をさせない治療をする群、(2)治療継続にてDisease Controlを目指す群、(3)緩和ケアにより苦痛の少ない治療を提案する群の3群に分けられていた多発性骨髄腫の治療戦略だが、ダラツムマブにより今後は(1)群が大きく増加するという。「これからはどのようにMRD陰性を獲得し、治療を止める(=治癒)かがポイント」(鈴木氏)

最後に鈴木氏は「現在は、ダラツムマブなどの新規薬剤で生存延長の期待が高まった状態。今後はこれら新規薬剤が初発で使えるようになることで多発性骨髄腫が“死なない病気”に、そして“治癒できる病気”へと進み、最終的には“予防できる病気”となること」を今後の展望として語った。(QLifePro編集部)

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