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ラジカル殺菌歯周病治療器の有効性を医師主導治験で実証-東北大

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2017年10月27日 PM12:45

3%過酸化水素に青色の光を照射、ラジカルを生成して殺菌

東北大学は10月25日、ラジカル殺菌歯周病治療器の臨床的有効性を医師主導治験で実証したと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科口腔システム補綴学分野の佐々木啓一教授および同研究科先端フリーラジカル制御学共同研究講座の菅野太郎教授ら研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載された。


画像はリリースより

重度の歯周病症例では、歯周ポケットの深化に伴って治療器具が患部まで十分に届かず、外科処置が必要となることがある。この従来法の臨床効果を補うために、抗生物質を歯周ポケットに局所投与する方法が併用される。しかし、抗生剤の局所投与による抗菌療法では、抗生剤を歯周ポケット内に長期的に留置させることが困難であり、繰り返しの治療が必要となるという問題点がある。

東北大学では、重度の歯周病を効率的に治療するために、消毒薬として用いられる3%過酸化水素に対して青色可視光を照射することで発生するラジカルを応用した殺菌法を考案。「」を開発し、臨床的な有効性を検証するために東北大学病院主導で治験を行ったという。

従来法などと比べ、歯周ポケットが有意に浅く

今回の治験は、2015年7月~2016年4月に東北大学病院と仙台市内の歯科医院の2施設にて、治験参加基準を満たし、中等度および重度の慢性歯周炎と診断された被験者に対して行われた。53人の被験者の歯周病罹患歯142本を対象として、ラジカル殺菌歯周病治療器を用いた治療(Group1)、従来法と抗生剤ゲルの局所投与を併用する方法(Group2)ならびに従来法のみ(Group3)を行い、治療効果を比較。治療前・後に歯周ポケットの深さや歯周病菌数などを調べ、治療の効果を評価した。

その結果、治療後12週の時点で、Group1では、Group2および3よりも有意に浅い歯周ポケットが認められたという。また、治療後4週の時点では、Group1の歯周ポケット内の歯周病原因菌は、Group3より有意に少なく、Group2と同程度であることがわかった。このことから、ラジカル殺菌治療器による単回の治療は、抗生剤ゲルを繰り返し投与する方法と同等の殺菌作用を示すことが明らかとなった。Group2では歯周病原因菌は減少したものの、繰り返し抗生剤ゲルを投与することで長期間にわたって歯周ポケット内に異物が存在することになり、歯周組織の治癒に影響を与えたため、Group1よりも深い歯周ポケットが残ったものと考えられるという。

これらの結果より、ラジカル殺菌歯周病治療器を用いた治療は、中等度・重度の歯周炎治療において有効であることが明らかになった。今後、東北大学と企業間で、新規医療機器の承認取得に向けた取り組みを行い、早期の臨床導入を目指す、と研究グループは述べている。

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