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免疫活性化に起因する不安や恐怖の亢進メカニズムを解明-理研

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2017年10月26日 PM02:00

不明な点が多い免疫系と神経系の生理システムの相互作用

理化学研究所は10月24日、マウスを用いて免疫活性化を起因とする不安・恐怖亢進メカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所統合生命医科学研究センター粘膜免疫研究チームのシドニア・ファガラサンチームリーダー、宮島倫生研究員、章白浩特別研究員らの共同研究グループによるもの。研究成果は「Nature Immunology」に掲載されるのに先行し、オンライン版に10月23日付で掲載されている。


画像はリリースより

免疫細胞の1種であるT細胞は風邪や病気などで活性化されると、細胞内代謝を変化させることで、持続的に増殖したり、エフェクター機能を発現したり、免疫記憶をつかさどったりすることが知られている。しかし、持続的な免疫細胞の活性化が細胞外の全身性のメタボロームに与える影響は明らかになっておらず、免疫系と神経系の生理システムの相互作用についても、未だ不明な点が多い。

活性化したT細胞、トリプトファンやチロシンを多量に取り込む

今回、研究グループは、慢性免疫活性化モデルであるPD-1欠損マウスを解析し、活性化したT細胞によって全身性の血中メタボロームプロファイルが変化することを明らかにした。なかでも、アミノ酸のトリプトファンやチロシンの血中濃度が減少しており、その原因はリンパ節で活性化・増殖したT細胞が細胞内にトリプトファンやチロシンを多量に取り込むためであると解明した。

また、トリプトファンやチロシンは、PD-1欠損マウスの脳でも減少しており、それらを前駆体とするセロトニンやドーパミンという神経伝達物質も脳で減少。さらに、セロトニンやドーパミンの減少に伴い、PD-1欠損マウスでは不安様行動や恐怖反応が亢進していることがわかったという。これらの結果から、免疫活性化に起因する前駆体アミノ酸の減少による神経伝達物質の欠乏が不安様行動や恐怖反応の亢進を引き起こすというメカニズムと、免疫系と神経系の生理システムの相互作用の一端が明らかになったとしている。

一部の精神疾患は、免疫活性化に伴うメタボローム変化に起因して発症する場合があることが予想されている。今後、実際の精神疾患の患者において、免疫系の活性化、免疫系遺伝子の変異、メタボローム変化を調べることで、これまで不明だった発症原因の解明につながると期待できる、と研究グループは述べている。

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