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常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎の病態メカニズムを解明-阪大

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2017年08月21日 PM02:00

腎臓の嚢胞形成、本態性高血圧、肝臓の繊維化を伴う難病

大阪大学は8月10日、常染色体劣性遺伝性多発性嚢胞腎(ARPKD)における、嚢胞形成、、肝繊維化の病態を統一的に説明するメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院医学系研究科の貝森淳哉寄附講座准教授(先端移植基盤医療学)、猪阪善隆教授(腎臓内科学)らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」に公開された。


画像はリリースより

)は、腎臓や肝臓に嚢胞が形成される、成人に発症する遺伝性疾患。一方、ARPKDは、新生児に見られる病気で、腎臓に嚢胞形成が見られるほか、本態性高血圧や肝臓の繊維化を伴う。ARPKDとADPKDは、同じような病気だが、出現する病態が異なるメカニズムについては、よくわかっていなかった。

遺伝子異常、ユビキチンリガーゼの輸送を阻害

研究グループは、モデル動物や患者の組織を用いて、ARPKDの原因遺伝子からできるタンパク質分子(PD1)を含む小胞体を詳細に分析した。その過程で、多くのユビキチンリガーゼ(SMURF1、SMURF2、NEDD4-2)を制御する分子NDFIP2がPD1と同じ小胞体に存在し、PD1をコードする遺伝子に異常が起こるとNDFIP2によるユビキチンリガーゼの制御ができなくなり、ユビキチンリガーゼを正常に輸送できなくなることを発見。これにより、細胞骨格を制御する分子(RhoA)、腎尿細管で塩分の再吸収を行う分子(ENac)、細胞に繊維質を作らせる分子(TGF-β受容体)を正常に消去することができなくなり、嚢胞形成のような細胞骨格の異常、塩分過剰な蓄積による高血圧、肝臓の繊維化を引き起こすことが示唆されたという。

今回の研究成果により、ARPKDの特徴的な病態である腎臓嚢胞形成、本態性高血圧、肝臓の繊維化が統一的に説明できることになり、今まで治療法の無かった新生児の腎臓難病に対する治療法の確立が期待される、と研究グループは述べている。

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