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がん治療薬として有望な組換え抗体分子の簡便なスクリーニング手法を開発-東北大

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2017年06月13日 PM02:31

次世代型の抗体医薬品として期待される二重特異性抗体

東北大学は6月9日、がん細胞を効果的に傷害でき、治療薬として有望な組み換え抗体分子を簡便にスクリーニングする手法の開発に成功したと発表した。この研究は、同大学の熊谷泉名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」のオンライン版に6月6日付けで掲載されている。


画像はリリースより

がん細胞と免疫に関与するT細胞を架橋できる二重特異性抗体は、従来とは異なる作用機序でがん細胞を傷害できることから次世代型の抗体医薬品として期待されている。この二重特異性抗体の1種であり、がん細胞結合抗体とリンパ球結合抗体の分子認識部位のみから構成される低分子で小型な「ディアボディ」は、高い薬効を有することが知られている。しかし、組み合わせによっては薬効が変化してしまうという課題があり、高薬効型のディアボディを創出するには、2種の抗体の組み合わせから網羅的にディアボディを作製し、そのライブラリから簡便で効率的に高薬効型をスクリーニングする手法の開発が急務だ。

従来の1,000倍高い薬効を示すディアボディの創製に成功

研究グループは、発現遺伝子ベクターの効率的な作製法、組み換え抗体の簡易的な精製のみを介した簡便な薬効評価法を開発することで、組み合わせの網羅的な検討を可能とするプロセスを構築。これを実証するために、実際に100を超えるディアボディを網羅的に作製し、開発した薬効評価法を用いてスクリーニングを行った。その結果、従来よりも1,000倍高い薬効を示すディアボディの創製に成功したという。

さらに、スクリーニングで選抜されてきた高薬効型ディアボディ群の諸特性を比較したところ、「LH型と呼ばれる構造設計が高薬効を発現しやすい」、「効果的に薬効を発現できるエピトープが存在する」、「リンパ球に対する結合力より、がん細胞に対する結合力の方が薬効発現に重要である」など、薬効発現に大きく関わる薬効ルールを見出すことにも成功。組換え型がん治療抗体開発の更なる加速が期待されるという。

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