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酸化ストレスが妊娠高血圧症候群の病態を改善-東北大

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2017年05月19日 PM01:15

胎児の発育を妨げ、母体の臓器に障害をもたらす妊娠高血圧症候群

東北大学は5月16日、妊娠高血圧症候群の原因のひとつとされていた「酸化ストレス」が、妊娠高血圧症候群を発症している母体や胎児の病態を改善することを発見したと発表した。この研究は、同大東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門の祢津昌広助教、同大医学系研究科医化学分野の相馬友和研究員(現ノースウェスタン大学)、医学系研究科酸素医学分野の鈴木教郎准教授、医学系研究科医化学分野・東北メディカル・メガバンク機構長の山本雅之教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Science Signaling」オンライン版に5月16日付けで掲載されている。


画像はリリースより

妊娠高血圧症候群は、妊娠中期から高血圧を発症し、全妊婦の3~5%の頻度で発症する疾患。胎児の発育を妨げるだけでなく、母体のさまざまな臓器に障害をもたらし、時に命に関わる事態を引き起こす。また、生活習慣病による高血圧とは異なり、原因もよくわかっていない。

妊娠高血圧症候群の胎盤では、細胞を損傷させる活性酸素種などの分子が蓄積した酸化ストレスが亢進している。そのため、酸化ストレスが血管などの胎盤組織を障害し、妊娠高血圧症候群の病態を悪化させると考えられていた。そこで、抗酸化剤である酸化ストレス緩和薬の妊娠高血圧症候群に対する効果について、国際的な大規模研究が10年ほど前に行われた。しかし、抗酸化剤は妊娠高血圧症候群に対して効果が無く、むしろ胎児の発育遅延を悪化させる可能性があると判明している。

酸化ストレスに発育不良となった胎盤血管の成長を促す作用

研究グループはこれまでに、生体内の酸化ストレスが「」と呼ばれるタンパク質によって軽減されることを発見している。今回の研究では、遺伝子改変や薬剤投与の手法を用いて妊娠高血圧マウスのNrf2の活性を変化させることにより、酸化ストレスのレベルを増減させ、その影響を検討した。その結果、妊娠高血圧マウスでは、20%程度のマウスが妊娠中に死亡したが、酸化ストレスレベルを下げたところ、約40%のマウスが死亡した一方で、酸化ストレスレベルを上げたマウスでは、死亡率を5%以下に抑えることができたという。

さらに、酸化ストレスが妊娠高血圧症候群の症状を改善するしくみを明らかにするために、胎盤の解析を行った。妊娠高血圧マウスの胎盤では、血管の数が少ないが、酸化ストレスのレベルを下げるとさらに減少し、酸化ストレスのレベルを上げたところ、妊娠高血圧マウスでも正常妊娠マウスと同程度の血管が形成されることがわかったとしている。

今回の研究により、妊娠高血圧症候群によって発育不良となった胎盤血管に対して、酸化ストレスが血管の成長を促す作用を持つことも示された。これらの発見は、妊娠高血圧症候群の病態解明と、治療法開発に繋がることが期待される、と研究グループは述べている。

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