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ニッケルアレルギー発症に関わるタンパク質「CXCL4」を発見−東北大

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2017年05月08日 PM02:00

ケモカインの1種であるCXCL4

東北大学は5月1日、ニッケルアレルギーの発症に関わるニッケル結合タンパク質がケモカインの1種であるCXCL4であることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科口腔分子制御学分野の黒石智誠助教と菅原俊二教授らのグループによるもの。研究成果は「Clinical & Experimental Allergy」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

身の回りにある金属製品から溶出した金属イオンは、生体内に侵入すると金属アレルギーを引き起こし、接触性皮膚炎などのアレルギー症状を誘発する。さまざまな金属のうち、ニッケルは抗原性検査における陽性率の高さなどから最も重要視されている金属のひとつ。その一方、金属イオン単独では免疫システムに認識されるには小さすぎるため、何らかの自己分子に結合して複合体を形成することにより免疫システムに認識されるハプテンの一種と考えられているが、パートナー分子などの詳細は明らかになっていなかった。

研究グループは、ニッケルアレルギーマウスモデルを開発。このマウスモデルでは、細菌の菌体成分の一種であるリポ多糖とニッケルイオンの混合溶液をマウスに注射することにより、ニッケルに対する免疫応答を誘導。そして、マウスの耳にニッケル溶液を注射することにより引き起こされる耳の腫れを指標として、ニッケルアレルギーの程度を測定した。今までの研究からリポ多糖がニッケルアレルギーを増強することが明らかになっており、リポ多糖を注射したマウスの血清についてニッケルアレルギー増強活性を調べた。その結果、単独では耳の腫れを引き起こすことの無い低濃度のニッケル溶液であっても、血清と混合することにより、耳の腫れを誘導することが明らかとなった。

ニッケルアレルギーの予防法や治療法の開発応用へ期待

耳の腫れを誘導する活性を指標として、血清中のタンパク質を精製したところ、ニッケル結合タンパク質を含む画分にこの活性が含まれることが判明。この画分に特異的に含まれるタンパク質について、質量分析法により解析した結果、ケモカインの1種であるCXCL4であることが判明した。さらに、遺伝子組換えCXCL4を用いた解析から、CXCL4は、抗原が再び生体内に侵入することによりさまざまなアレルギー症状を発症する「惹起相」だけではなく、抗原に対する免疫応答が誘導される「感作相」も増強することが明らかとなった。

CXCL4は60年以上前に発見されたタンパク質だが、ニッケルイオンとの結合性やニッケルアレルギー増強活性は、今回の研究が世界で初めて報告。今回の研究成果は、金属アレルギーの発症メカニズムを解明する重要な基礎研究であり、CXCL4を用いたニッケルアレルギーの予防・治療法開発への応用が期待される、と研究グループは述べている。

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