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マラリアの感染防御に働くガンマデルタT細胞とその機能変化を解明-杏林大

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2017年05月02日 PM01:45

免疫応答において重要な役割を担う自然免疫様リンパ球のひとつ

杏林大学は4月28日、マラリアの感染防御に働くガンマデルタT細胞とその機能変化を解明したと発表した。この研究は、同大学医学部感染症学の井上信一講師、小林富美惠教授らの研究グループによるもの。同研究成果は、「European Journal of Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより

マラリアは、世界で毎年2億人が発症し、うち43万人以上が死に至る世界的に極めて重要な感染症。マラリア根絶にはマラリアワクチンが重要となるが、有効なワクチンは未だ開発できていない。この現状を打破するために、マラリア防御免疫機構の詳細を解明することが極めて重要だ。

(γδT細胞)は、細菌やウイルスや寄生虫などのさまざまな病原体に対する免疫応答において重要な役割を担う自然免疫様リンパ球のひとつ。マラリア患者において、脾臓や末梢血でのγδT細胞数が増加することから、マラリアとγδT細胞の関連性が示唆されていたが、マラリアにおけるγδT細胞の役割の詳細は今まで未解明だった。

Vγ1+γδT細胞は、感染が進むとγδT細胞疲弊を引き起す

これまで研究グループは、マウスマラリアモデルを用いて、γδT細胞がIFN-γの産生とCD40 Ligandの発現により樹状細胞の活性化を促進することで、IFN-γ産生性ヘルパーT細胞の免疫応答(Th応答)が強く誘導され、マラリア原虫の効率的な排除に寄与しているという感染防御機構を提唱してきた。

そして今回、このマラリア防御免疫に重要なγδT細胞は、Vγ1+γδT細胞(T細胞レセプターのひとつであるTCRVγ1を発現する細胞)であることを発見。同研究により、このVγ1+γδT細胞は、感染初期に活性化してIFN-γ産生能を向上させるものの、感染後期になるとIFN-γ産生能が低下し、さらに抑制性レセプター群(PD-1、LAG-3、TIM-3)を強発現して、γδT細胞疲弊を引き起すことが明らかになった。また、感染後の樹状細胞へのIFN-γ刺激が影響してγδT細胞の疲弊につながることも示されたという。

今後は、この感染実験モデルを用いて、γδT細胞疲弊という免疫現象の詳細と、それがマラリア防御免疫にどのように影響しているのか解明されることが期待できる、と研究グループは述べている。

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