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ハイリスク患者の脂質管理、スタチンとの併用療法でさらに低く-アステラス・アムジェン

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2017年04月07日 PM02:00

診断率の低い家族性高コレステロール血症

アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社は3月22日、同社のPCSK9阻害薬「(R)」(一般名:)に関するFOURIER試験の結果を発表した。これを受けて同社は4月3日、「LDLコレステロール低下療法と心血管イベント抑制の最新研究」と題してメディアセミナーを開催。帝京大学臨床研究センターの寺本民生センター長と日本大学医学部内科学系循環器内科学分野の平山篤志主任教授が講演した。


帝京大学臨床研究センター 
寺本民生センター長

動脈硬化の危険因子のひとつである高コレステロール血症。スタチン投与による心血管疾患の発症抑制効果は複数のメタ解析で示されているが、それに対し寺本氏はスタチン投与後のLDLコレステロール(LDL-C)変化率について、個人差が大きいことを示した報告を紹介。ただスタチンを投与すればよいのではなく、LDL-Cの目標値を定めて、その値を目指して薬物治療を行う必要があると指摘した。LDL-Cは下げれば下げるほど心血管イベントの発症を抑えられる、いわゆる“Lower Is Better”を裏付ける報告もある。海外の報告では、スタチン単独よりもエゼチミブと併用したほうが、しっかりとLDL-Cを下げられることが示されているという。

「スタチンだけではコレステロールがあまり下がらない患者には、(FH)患者が含まれているのでは、と思っている」と寺本氏。FHは常染色体優性遺伝で、LDL受容体完全欠損のホモ型FHは16万~100万人に1人程度と稀な疾患だが、LDL受容体が半数程度しかないヘテロ型FHは200~500人に1人程度と数が多い。ホモ型FHは平均12.5歳で心血管疾患を発症、ヘテロ型でも男性の場合は30代で心筋梗塞を起こす例もあり、早期診断と早期介入が予防医学的な面からも重要であるという。世界的に見ても日本におけるFHの診断率は高いとはいえず、診断率の向上も課題。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012における、FHでのLDL-C目標値は100mg/dLまたは治療前の50%未満だ。

エボロクマブは、LDL-Cの代謝においてLDL受容体を分解させるPCSK9に対する抗体医薬。スタチンの投与によりPCSK9の合成が高まることから、スタチンとの併用において、さらなるLDL-C低下効果が期待されている。寺本氏は、「コレステロールは下げればそれなりの効果がある。早く診断して的確に治療する、その手段が手に入った」と、併用によるコントロール向上への期待をのぞかせた。

エボロクマブとスタチン併用でさらなるLDL-C低下効果

FOURIER試験は、心血管疾患のハイリスク患者を対象として、スタチンとエボロクマブの併用療法とプラセボとスタチン併用療法における心血管イベントの減少を比較する国際共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験。主要評価項目に心血管死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院または冠血行再建術の複合エンドポイントを設定し、主な副次評価項目は、主要評価項目から不安定狭心症による入院と冠血行再建術を除いたハードエンドポイントとしている。エボロクマブ併用群13,784例、プラセボ群13,780例の合計27,564例が登録された。


日本大学医学部内科学系 循環器内科学分野
平山篤志主任教授

その結果、LDL-C中央値はエボロクマブ併用群で治療開始4週から低下し、168週後では30mg/dLと、プラセボ群の92mg/dLと比べ、絶対的低下で56mg/dL低く、平均低下率は59%。エボロクマブ群の患者の42%で25mg/dL以下まで低下した。主要評価項目である心血管イベントの発生リスクは、36か月後には15%減少、主な副次評価項目でも20%の減少が認められ、さらにリスク低下の程度が経時的に増大したことから、試験期間の長さに比例したイベント低下が認められたという。

なお、試験期間中に非常に低いLDL-Cを達成したことによる、新たな安全性上の懸念は特定されておらず、有害事象の発現率に両群間での差はなかったという。平山氏は、「エボロクマブの有益性は、過去のCTTCと一致している。これらの結果から、現在の目標値を下回るLDL-Cの低下が、心血管リスクの高い患者にベネフィットをもたらすことが示された」とし、心血管疾患の既往があって再発した例などハイリスク患者の次の再発予防において、さらなるLDL-C低下療法が有効であると述べた。

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