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生命予後が悪い難診断深在性真菌症であるムーコル症の早期診断法を開発-大阪市大ら

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2017年02月17日 AM10:45

簡便で迅速に診断できる血清診断法の開発望まれる

大阪市立大学は2月15日、生命予後が極めて悪いことで知られる難診断深在性真菌症であるムーコル症の早期診断法の開発に世界で初めて成功したことを発表した。この研究は、同大学医学研究科臨床感染制御学の掛屋弘教授、細菌学の金子幸弘教授、国立感染症研究所真菌部の宮崎義継部長らの研究グループによるもの。研究成果は「Medical Mycology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

ムーコル症は、主に血液疾患や悪性腫瘍、重症の糖尿病患者などに発症する深在性真菌症で、肺や副鼻腔、皮膚、全身播種を引き起こし、多くの場合、命に関わる。一般にムーコル症の診断は、真菌の培養や病理組織検査で行われるが、培養や病理検査には数日かかる。しかし、ムーコル症患者の全身状態が悪く、十分な検査が行えないことも多いために、死亡してから判明することも珍しくない。

近年は、深在性真菌症で亡くなる血液疾患患者でムーコル症が原因となるケースが増えていることが報告されている。その他の代表的な深在性真菌症(カンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコックス症など)には、早期診断に役立つ血液検査が存在しているが、ムーコル症にはないために、簡便で迅速に診断できる血清診断法の開発が望まれている。

臨床応用にはヒトの検体を使用した臨床研究が必要だが、その第一歩となる研究成果

研究グループは、ムーコル症の代表真菌である「Rhizopus oryzae」からシグナルシークエンス・トラップ法を用いて分泌蛋白や細胞膜に存在する蛋白のスクリーニングを行い、抗原A(RSAと命名した未知の蛋白、23kDa)を候補として選出。選出した抗原Aは、培養上清中に経時的に増加し、分泌蛋白である可能性が示唆された。また、抗原AはRhizopus oryzaeの近縁種の培養上清中にも検出され、抗原Aの抗体を使用した免疫染色の結果により、抗原Aは細胞表面に存在することが示された。これらの結果から、抗原Aはムーコル症の血清診断に利用できる理想的な蛋白である可能性が示唆されたため、抗原Aをウサギに免疫して抗体を作製して、検査キットを作製し、検査キットを使用して免疫不全マウスを用いた感染実験を行ったところ、感染マウスの血清中および肺上清より抗原Aを検出したとしている。

今回の研究によって、血液検査を用いて短時間で診断可能であると示唆されたことは、新規性の高い診断法の開発といえる。また、今回の研究により、シグナルシークエンス・トラップ法が深在性真菌症にも応用可能であることが示唆されたため、他の真菌症への応用が期待される。

実際の臨床応用までにはヒトの検体を使用した臨床研究が必要で、今回の成果はその第一歩となる。研究グループは、ムーコル症の早期診断方法を確立し、適切な治療ができるよう今後も研究を進めていく考え。現時点では、動物モデルを用いての非臨床試験の段階だが、産学連携のもとさらに感度の高い検査キットを開発し、できるだけ早く臨床試験を開始したいとしている。

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