英国での耐性菌流行、背景に抗生物質の過剰使用
2006年から英国で生じていた重度の下痢の流行は、抗生物質の過剰使用が誘因となっていたことが新たな研究で報告された。研究グループは、「スーパー耐性菌(superbug)」とも呼ばれるクロストリジウム・ディフィシルによる腸感染症の流行に関連する病院データを分析した結果、フルオロキノロン系の抗生物質(シプロフロキサシン、レボフロキサシンなど)の使用を減らすことにより流行が抑えられたとの結論に達した。

画像提供HealthDay
研究共著者である英オックスフォード大学微生物学教授のDerrick Crook氏は、「北米などのフルオロキノロンの処方が制限されていない地域では、依然としてC. ディフィシル感染症の流行がみられることから、今回の知見は国際的にも重要なものである」と述べている。フルオロキノロンを過剰に使用すると、耐性のない腸内細菌が死滅するため、抗生物質耐性をもつC. ディフィシルが急速に増殖しやすくなるという。
入念な清掃(deep cleaning)や抗生物質の慎重な処方などの緊急措置が(流行発生後に)導入され、C. ディフィシル感染症の数は徐々に減少して80%低下したが、正確な理由はわかっていなかった。
今回の研究で、C. ディフィシルの流行はフルオロキノロン系抗生物質の過剰使用の結果であり、このクラスの抗生物質の使用を低減することによりコントロールできたことが明らかにされた。その理由は、フルオロキノロン系に耐性をもつC. ディフィシルだけが消失したためである。一方で、耐性をもたないC. ディフィシルによる下痢の症例数には変化がみられなかった。
「この種の抗生物質の使用を減らすことがC. ディフィシルの全国的な流行を阻止する最善の方法であり、高額な費用のかかる入念な清掃は不要であったといえる」と、Crook氏は述べる一方で、「ただし、他の感染症の拡大を抑えるために、十分な手指衛生については引き続き実践していくことが重要である」と付け加えている。この研究は「The Lancet Infectious Diseases」に1月24日掲載された。
米国疾病管理予防センター(CDC)によると、米国では2011年に50万人弱がC. ディフィシル感染症に罹患し、推定2万9,000人が1カ月以内に死亡した。感染症の多くは院内で発生したものだという。
▼外部リンク
・Antibiotic Overuse Behind ‘Superbug’ Outbreak in U.K. Hospitals

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