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ドパミン神経前駆細胞を高効率で濃縮、パーキンソン病への細胞移植技術開発へ-CiRA

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2016年10月18日 PM02:30

均一な細胞集団を得る手法のひとつ、セルソーティング

京都大学iPS細胞研究所()は10月14日、CiRA臨床応用研究部門の佐俣文平特定研究員および髙橋淳教授らの研究グループが、株式会社カン研究所と行った共同研究により、ヒト多能性幹細胞由来のドパミン神経前駆細胞を高効率で濃縮する手法を開発したと発表した。同研究成果は、英科学誌「Nature Communications」に同日付けでオンライン公開されている。


画像はリリースより

パーキンソン病は、中脳黒質にあるドパミン神経細胞が進行性に変性脱落することによって生じる神経変性疾患。根本的な原因は脳内のドパミン神経細胞の減少であり、その補充を目的とした細胞移植治療に期待が寄せられている。ヒト多能性幹細胞は高い増殖性と、体のあらゆる細胞に変化(分化)できる多能性を有することから、細胞移植治療の材料として注目されているが、分化誘導後の細胞には増殖性を示す細胞など目的以外の細胞が混在していることがあり、安全性と有効性の観点からこれらの細胞を移植する前に取り除く必要がある。

セルソーターは、細胞の散乱光や蛍光の情報を基に、目的の細胞集団を生きた状態のまま選別できる装置。特定の細胞に発現する表面抗原に対して、予め蛍光を付加した標識抗体を結合させることで、その蛍光の強度を指標にして細胞を選別することができる。これまでにドパミン神経前駆細胞に発現する細胞表面抗原としてCORINやALCAMが報告されているが、いずれの抗原も中脳腹側以外にも発現していることから、より特異的に中脳腹側細胞を見分けることのできるマーカーの同定が望まれていた。

選別後の細胞、モデル動物へ安全かつ効率的な移植が可能

神経上皮から発生する底板細胞からは神経細胞は生じないが、中脳の底板細胞に限ってはドパミン神経細胞への分化能を有することがわかっている。そこで今回の研究では、中脳底板細胞に特異的に発現する細胞表面抗原を同定することによって、ドパミン神経前駆細胞の濃縮を試みたという。

同研究グループは、中脳腹側に存在するドパミン神経前駆細胞の特異的マーカー(目印)を同定するために、中脳腹側細胞の遺伝子の発現を調べることで、新しい細胞表面抗原としてLRTM1を同定。抗LRTM1抗体を用いた細胞選別を行うことにより、ヒト多能性幹細胞から分化させた細胞集団のうち、目的のドパミン神経前駆細胞の割合を80%以上に高めることに成功した。

さらに、選別後の細胞をパーキンソン病モデル動物に移植することによって、安全かつ効率的なドパミン神経細胞の移植が可能であることを明らかにしたという。これらの成果によって、パーキンソン病に対する細胞移植治療技術開発の促進が期待されると、研究グループは述べている。

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