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樹状細胞ワクチン療法の進行肺がん260例の臨床成績、専門誌に掲載-テラ

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2016年08月18日 PM12:00

生存期間延長に関係する因子や安全性を検討

テラ株式会社は8月16日、樹状細胞ワクチン療法について、進行肺がんに対する有用性と予後因子の検討に関する論文が、がんの免疫分野における専門学術誌である「Cancer Immunology, Immunotherapy」電子版に掲載されたと発表した。

樹状細胞ワクチン療法とは、本来、血液中に数少ない樹状細胞(体内に侵入した異物を攻撃する役割を持つリンパ球に対して、攻撃指令を与える司令塔のような細胞)を体外で大量に培養し、患者のがん組織や人工的に作製したがんの目印である物質(がん抗原)の特徴を認識させて体内に戻すことで、樹状細胞からリンパ球にがんの特徴を伝達し、そのリンパ球にがん細胞を狙って攻撃させるといわれるがん免疫療法。テラが提供する独自の技術である。

今回の研究では、切除不能な進行・転移非小細胞肺がんに対して、化学療法と同社の樹状細胞ワクチン療法とを併用し、生存期間延長に関係する因子や安全性を検討。信州大学医学部附属病院、、セレンクリニックグループにおける260症例を後ろ向きに解析した結果が報告されている。

肺腺がんに対して特に有用の可能性

報告によると、非小細胞肺がんと診断された日と、テラの樹状細胞ワクチン療法の初回投与からの生存期間中央値(Median Survival Time、MST)は、それぞれ33.0か月と13.8か月だった。非小細胞肺がんの中でも肺腺がんでは、初回投与からのMSTは15.3か月であり、非小細胞肺がんの中でも肺腺がんに対して特に有用である可能性が示唆されたとしている。

生存期間への関与因子をCox比例ハザードモデルにより多変量解析したところ、樹状細胞投与部位の発赤反応陽性(縦径3cm以上と定義)が、生存期間延長に関与する独立因子だった。これは、テラが過去に報告した、切除不能な進行膵臓がんにおける後向き解析の結果と同様だった。また、ピアソンのカイ二乗検定から、この樹状細胞投与部位の発赤反応は、樹状細胞投与後の発熱、全身状態(ECOG-PS)、好中球/リンパ球比(NLR)、炎症のマーカー(CRP)などが従属因子であるという結果が得られた。

同社は、今後も免疫療法の更なるエビデンスの強化を図り、より良い細胞医療の開発・普及に取り組んでいきたいとしている。今後は、既存療法との比較が可能な臨床試験等の実施が期待される。

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