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“自費リハビリ”という選択肢~「脳梗塞リハビリセンター」ワイズ社CEO早見氏に聞く

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2016年07月01日 PM04:00

脳血管疾患や運動器疾患などにより失われた身体機能の回復に不可欠なリハビリテーション。従来のリハビリにおける目標は「ADLの回復」が中心だったが、近年、働き盛りの世代の患者を中心に、職場復帰などを見据えた「維持ではなく改善を目指したい」「できることをもっと増やしたい」という声が増えてきている。こうした声の受け皿として、新たな選択肢「自費リハビリ」を提供するのが、首都圏に5施設を構える「」だ。

なぜ、自費でのリハビリという解を得たのか。どのようなサービスとして、展開してゆくのか。同センターを運営する株式会社ワイズ(東京都中央区)の代表取締役会長兼CEOの早見泰弘氏にお話しを伺った。(聞き手・QLifePro編集部)

「絶対に職場復帰したい」ひとつの出会いが「脳梗塞リハビリセンター」開設のきっかけに


株式会社ワイズ 代表取締役会長兼CEO 早見泰弘氏

リハビリ施設を立ち上げたきっかけは、ある会社の役員を務めていた2013年に、自分自身がヘルニアで手術を受け、リハビリを経験したことです。ビジネスマンとして約20年間ずっと前向きな気持ちでやってきたのですが、手術とその後のリハビリを通して、「歩けないだけで気持ちがこんなに落ち込むんだな」と感じました。そこから「人の役に立つ、喜んでもらえるような仕事でもう一度起業したい」という想いを持ち、リハビリ施設を立ち上げました。

2014年に株式会社ワイズを起業し、最初に手掛けたのはリハビリ特化型デイサービスの「」でした。デイサービスとしては後発でしたが、施設の差別化を図るなどして、経営は順調でした。当初は高齢者をメインターゲットに考えていたのですが、蓋を開けてみると、若い人も多く利用していました。その中に当時42歳だった私と同い年の女性がいました。

バリバリのキャリアウーマンだった彼女は、ある日突然、脳梗塞になり、その後非常に重い後遺症に悩まれていました。そのころ私も、社員に交じり、送迎の運転手などを務めていたのですが、その送迎中、彼女はいつも「絶対に職場復帰したい」という強い意志を口にしていました。アルクルは介護保険が利用できるリハビリ施設ですが、グループワークが中心で、個別のリハビリは1人15分くらい。「職場復帰」を願う彼女の「もっとやりたい」という気持ちには応えられていませんでした。

脳梗塞の後遺症が表れるのは、身体の右左、上肢下肢、言葉や記憶など、個々人でまったく異なります。さまざまな後遺症に対してグループでリハビリするのには限界がありました。さらに、通常の介護保険のサービスは、現状よりも悪くならないようにする「維持」が根底の考え方にあるため、「改善」を目指すプログラムの提供が困難な状況にありました。

利用者一人ひとりが求める「その人の状態にあった」「マンツーマンで期間・回数の縛りがない」リハビリサービスが世の中にはない。

アルクルを開所したことで、利用者の「生の声」を知ることができました。アルクルの開所から半年、2014年9月に脳梗塞リハビリセンターを立ち上げました。

ADLの回復はもちろん、「病気になる前」の身体を目指すため、遠方からも利用者が

文京区本郷に「脳梗塞リハビリセンター」の1号店をオープンした当初、都内在住の利用者がほとんどと予想していたのですが、実際には関東全域、はたまた東北や関西や九州からも全国から利用者さんが殺到しました。デイサービス・老健施設・訪問リハは、国の社会保障なので日本中どこにでもありますが、「たくさんの時間・質の高いリハビリをマンツーマンでやりたい」という気持ちに応えられる施設は、どこにもなかったということだと思います。

利用者の内訳は、脳梗塞発症後から1年以内の方がおよそ5割を占めていますが、発症から10年以上の方も11%いらっしゃいます。年代別では、40~60歳代が75%を占めています。エンジニアや理容師、すし職人やタクシードライバーといった「手に職」を持つ方が多くいらっしゃいます。こうした手に職を持つ方は、たとえADLが回復し、自立した生活が送れるようになったとしても、「ちょっとした感覚」が戻らなければ、その人にとっての「社会復帰・職場復帰」にはなりません。脳梗塞の後遺症で、その人が望む職業に戻れないというのは、その人自身にとっても、社会にとっても大きな問題であると考えます。


PT、OT、STなど国家資格を持つスタッフがリハビリをサポートする

開設当初「自費はあり得ない」から、いまでは医療者が推薦するまでに

開設当初、医療・介護業界の中では「自費であることを説明しづらく、あり得ない」などの意見もあがるなど、最初はなかなか理解いただけていなかったと思います。実際、開設から半年以上は、利用者のほぼ100%がインターネット検索で見つけて来た方たちでした。

開設から1年経ち、改善の実績が積み重なるにつれ、ケアマネージャーさん経由で脳梗塞リハビリセンターの話を聞いたという利用者も現れ始めました。リハビリに対する意欲が高い人、若い人が行くリハビリ施設がない、という問題意識がケアマネージャーさんたちの間にもあったのでしょう。

現在は医療・介護従事者の人から話を聞いて来所したという人が2割にまで増えてきています。実績や口コミが増えるに連れて、病院のソーシャルワーカーさんから、退院後のリハビリ施設として紹介されたという方も増えており、医療・介護関係者の方にも認知されつつあると思います。

独自のエビデンスを集積。医療従事者との情報交換や学会発表の機会も

最近では、「日本脳損傷者ケアリング・コミュニティ学会2016」という学会で発表させていただいたり、回復期病院のドクターに施設の見学に来ていただいたり、医療関係者の方とコンタクトを取る機会も増えつつあります。先日、見学に来ていただいた回復期病院のドクターにも我々のメソッドを絶賛していただくことができました。そのメソッドは「どれくらいの期間」「どれくらいの頻度で」「どういうリハビリをしたらいいのか」、過去の事例や私たち独自のエビデンスからシステム化したものです。


独自のリハビリメソッド「リハセン式1・2・3Step Upシート」

病院のリハビリは多くの場合、「退院」がゴールですが、期間が限定されていない生活期のリハビリでは、「なにができるようになるのか」がゴール。パソコンを打ちたい、おにぎりを握りたい、ゴルフをもう一度やりたいなど、そのゴールは人それぞれ。ゴールにたどり着くまでに必要なことを因数分解して「見える化」したこのシステムは、現役のリハビリドクターからも分かりやすいとの意見をいただいております。「利用者さんと目標を決めて、目標を達成したら卒業していく」という考え方が、医療・介護従事者からも理解され始めていると思います。

実は最近、医療従事者やそのご家族にご利用いただくことも増えてきています。「もっとリハビリをやりたい」と思っていた医療従事者も多かったのかも知れません。そういう意味でも、我々の存在が認められつつあるのかな、と感じています。

地域に根付いた医療法人との施設展開も視野に

現在は、関東で5か所(本郷、新宿、田町・三田、川崎、西船橋)で脳梗塞リハビリセンターを運営しており、利用者は全国からやってきています。リピート率は8割を超えているのですが、残念ながら2割の方は続けたいという意思をおもちにも関わらず途中で辞められてしまっています。

続けられない理由として一番多いのは、実は「金銭的な問題」ではなく、「距離の問題」なのです。後遺症が残る方にとって、長距離の移動は大きな負担になるだけでなく、ご家族にも影響を与えることになります。この問題を解消するためには、我々が利用者さんに近づくのが一番ですから、今後はもっと各地に展開していきたいと考えています。

また、地域に根付いた医療法人と一緒に施設を展開することも視野に入れています。こうした協業も視野に入れるうえでも、今後はブルンストロームステージや機能的自立度評価表など医学的指標を用いたデータの収集に努め、エビデンスの蓄積を行います。

プラスアルファで「もう少しリハビリをやりたい・改善したい」人に選択肢を


卒業生の1人と新しい企画や取組みに関する打ち合わせにて

私たちが最も重要と考えることは、利用者が「なりたい自分になって社会復帰する」ということです。間もなく開設から2年を迎えるにあたり、一定の改善が見られた「卒業生」も多くなりました。

最近は、卒業生の集いのような企画や新しい取り組みをやりたいとの声が、彼ら自身から上がっています。同じように後遺症に悩んでいる人がたくさんいること、そしてそういう人に我々の施設を知ってほしい、という思いから卒業生自ら動いてくれているのです。これは本当にありがたいことです。

私たちの取り組みは、現在の医療・介護制度を否定するものではありません。万人を保障できている現在の社会保障制度は、世界でも類を見ない素晴らしいものです。ですが「退院後も、もっとリハビリをやりたい」という人に選択肢がないということが問題と考えています。「もう少しリハビリをやりたい・改善したい」という人たちのために、このチャレンジを継続していきます。

(はやみ・やすひろ)氏
1995年株式会社イニットを設立、代表取締役社長就任
2004年トランスコスモス株式会社へ営業権を譲渡し、事業統合。執行役員/常務執行役員歴任。国内上場子会社取締役、海外子会社取締役、董事長など多数兼務
2014年2月、株式会社ワイズ設立、代表取締役会長兼CEOに就任

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