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関節内へのmRNA投与で変形性関節症の進行抑制-東大

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2016年01月15日 PM12:00

マウスにmRNA内包の高分子ミセル投与

東京大学は1月13日、軟骨の形成に働く転写因子のメッセンジャーRNA()を関節内へ届けると変形性関節症の進行を抑制できることを世界で初めて示した研究結果を発表した。


画像はリリースより

研究は、同大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻のハイラト アニ特任研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版に1月5日付けで掲載された。

関節軟骨は、生涯にわたって人間が運動する際に重要な役割を果たすが、様々な原因によって変性や傷害を受けると、変形性関節症を引き起こす。高齢化社会を迎えた現在、変形性関節症は高齢者のQOLを低下させ、健康寿命を脅かす代表的な疾患となっているが、根治的な治療法は開発されていない。

研究グループは、変形性膝関節症を発症するマウスの膝関節内に、3日に1回のペースで1か月間、軟骨形成に働く転写因子であるRUNX1のmRNAを内包した高分子ミセルを投与。その結果、RUNX1のmRNAを投与したマウス群の関節軟骨では、mRNAを投与していないマウス群と比べ、変形性関節症の進行が有意に抑えられたとしている。

病態修飾療法や組織再生療法への応用に期待

さらに、軟骨基質タンパク質(細胞の外側で軟骨を作る構造体)のひとつであるII型コラーゲン、軟骨形成に必須の転写因子SOX9、細胞が増殖していることを標識する因子(増殖細胞核抗原)の発現も上がった。

この研究成果は、膝関節内に届けられたmRNAが翻訳されてRUNX1タンパク質が作られ、このタンパク質が関節軟骨内部で治療用の転写因子として働くことで、軟骨細胞の形質の維持や増殖に関わる遺伝子群の発現を調節していることを示唆する。

研究グループでは、研究成果が運動器領域をはじめとした各種の変性疾患に対する病態の進行を抑制する根本的な治療法、病態修飾療法や組織再生療法へ応用されることが期待されるとしている。

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