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抗PD-1抗体「ニボルマブ」の使用に注意喚起-日本肺癌学会

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2015年12月25日 PM12:00

「切除不能な進行・再発の非細胞肺がん」の追加承認受けて

肺がんの新しい治療薬である抗PD-1抗体「(商品名:(R))」に12月17日付けで「切除不能な進行・再発の非細胞肺がん」に対する効能・効果が追加承認されたことを受けて、日本肺癌学会は12月18日、使用に当たっての注意喚起を呼びかける声明文を公開した。

免疫チェックポイント阻害剤である同剤には、リンパ球のがん細胞への攻撃力を高める作用がある。いわば体に本来備わっている防御力を高めるわけで、初回治療後に再発した際に行われる二次治療で従来の抗がん剤より優れた効果を発揮することがチェックメイト017および057という2つの臨床試験で証明された。嘔吐や脱毛などは見られず、一般的に副作用は軽いことが示されている。

効果の半面、副作用あることに理解求める

ニボルマブは、医療関係者や患者に大きな期待をもたれているが、2002年に「夢の新薬」とマスコミに称されて登場した肺がんの治療薬ゲフィチニブ(商品名:)では、発売直後に副作用として間質性肺炎が多発し、合計800人以上の患者が亡くなっており、同学会は、この過去を教訓にしなければならないと指摘。現在では、肺がん治療には欠かすことができないゲフィチニブだが、その安全で効果的な使用が根付くまでに多くの犠牲が払われたことを肝に銘じておく必要があるとして、以下の3点を訴えている。

  1. ニボルマブは全ての患者に有効な「夢の新薬」ではない
    肺扁平上皮がんの二次治療を対象としたチェックメイト017試験での奏効率は20%(対照のドセタキセルは9%)。同様に、肺腺がんを対象としたチェックメイト057試験での奏効率は19%(ドセタキセルは12%)だった。
  2. ニボルマブにも副作用があり、重篤になる場合もある
    副作用があった割合は、017試験が58%、057試験が69%。免疫関連副作用としては、甲状腺機能低下、下痢、肺臓炎、皮疹が見られた。この2つの試験では死亡例はなかったが、他の試験では死亡例も出ている。同剤は新しい作用機序を有する薬で、使用経験も少ないだけに注意が必要。
  3. ニボルマブが使えない患者がいる
    同剤の性質から、膠原病やリウマチ、間質性肺炎の患者には使用できない。これらの患者は重篤な副作用が起こる可能性がある。また、他の薬剤との併用についても安全性が確認されていない。併用療法は、安全性管理体制が整った医療機関において臨床試験として実施されるもの以外は受けるべきではない。

同学会は、薬は諸刃の剣であることを忘れずに、肺がん治療に精通した医療機関で冷静に、得られる利益と危険性のバランスについて検討した後に初めて使用されるべきとしている。

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