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魚油摂取が体脂肪減少、体温上昇もたらすメカニズム解明-京大

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2015年12月22日 PM12:30

DHAやEPA摂取による褐色脂肪細胞の増加促進明らかに

京都大学は12月18日、同大学農学研究科の河田照雄教授、後藤剛准教授らの研究グループが、魚に含まれる油(魚油:主成分はEPA、)の摂取が、脂肪燃焼細胞である「褐色脂肪細胞」(以下、褐色脂肪)の増加を促進し、体脂肪の減少や体温上昇をもたらすことを動物実験により証明したと発表した。


画像はリリースより

ヒトには「白色脂肪組織(White Adipose Tissue, WAT)」と「 (Brown Adipose Tissue, BAT)」の2種類の脂肪組織が存在する。WATは脂肪を貯めこむのに対して、BATは脂肪を分解し熱を産生することで体温を保持するとともに、全身のエネルギー調節に関わる。近年、白色脂肪が褐色脂肪のような機能を有する褐色化が起こり、褐色様白色脂肪細胞(ベージュ細胞)と呼ばれる細胞となることが分かってきた。これが成人にも存在し、その減少が中年太りやメタボリックシンドローム、生活習慣病の原因になることが明らかになってきている。よって、ベージュ細胞の減少を防ぐことができれば、肥満やそれに関連する病気を防ぐことができると考えられている。

また、魚油は世界的な疫学研究により過体重の抑制に効果があることが報告されていたが、詳細な作用機構は明らかになっていない。健康に良いとされ、長寿社会に貢献している日本型の食生活は、魚介類を豊富に含む食材を多用することが特徴の一つとなっているが、その科学的メカニズムも充分には解明されていない。そこで、同研究では、ベージュ細胞の誘導を介してエネルギー消費を高める食品として魚油に着目した。

魚油によるエネルギー代謝亢進、ベージュ細胞の発現亢進に起因

研究では、魚油がエネルギー代謝に及ぼす影響について、食餌誘導性肥満マウスを用いて調査。マウスに高脂肪食または魚油添加食(高脂肪食に1.2%または 2.4%魚油を添加)を10週間摂食させたところ、高脂肪食群に比べ、魚油添加食群では、酸素消費量が増加し、体重増加および体脂肪蓄積が抑制された。また、BATおよびWATで脱共役タンパク質1(UCP1)とβ3アドレナリン受容体の発現量が増加。さらに、魚油添加食群では、交感神経活動の指標となる尿中カテコールアミン分泌量のおだやかな増加が認められたとともに、迷走神経遮断手術を行ったマウスでは魚油投与による脂肪組織のUCP1発現誘導が認められなくなった。

魚油による交感神経活性化の作用点として、UCP1の誘導作用をもつトウガラシの辛味成分(カプサイシン)の受容体として知られているTRPV1(Transient Receptor Potential Vanilloid 1)に着目。TRPV1欠損マウスの魚油添加食群では、対照群で認められた魚油の作用が認められなくなった。これらの結果から、魚油によるエネルギー代謝の亢進は、胃・小腸に分布するTRPV1を介した交感神経活性化とそれにより引き起こされる褐色脂肪、特にベージュ細胞の発現亢進によるものであることが示された。

今後、研究グループでは、健康な食生活に役立つ油脂などについて、特にメタボリックシンドロームの改善が強く関わる健康寿命の延伸の機能に着目し、研究を発展させていくとしている。

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