医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 新たな食欲創出機構を解明、過食や肥満、糖尿病の新規治療ターゲットとなるか-自治医大

新たな食欲創出機構を解明、過食や肥満、糖尿病の新規治療ターゲットとなるか-自治医大

読了時間:約 1分16秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2015年07月28日 AM06:00

空腹時に食欲を創出する、新たなメカニズムを明らかに

自治医科大学は7月23日、空腹時に食欲を創出する新しい機構を明らかにした研究成果を発表した。この研究は、同大統合生理学の矢田俊彦教授、中田正範准教授と、国際医療福祉大学の栗田英治准教授らによるもの。研究成果は、米学術雑誌「American Journal of Physiology – Endocrinology and Metabolism」6月号に掲載された。

食欲は、脳視床下部の弓状核によって全身のエネルギー状態が感知されることにより調節されている。しかし、弓状核でエネルギー状態を神経興奮に変換するメカニズムには、未解明な部分が多かったという。

視床下部弓状核NKAが空腹・低血糖を感知

研究グループはラットを用いた実験で、全身の細胞のイオン環境を維持して機能を支えるナトリウム‐カリウムポンプNa+,K+-ATPase(NKA)が、弓状核においては空腹・低血糖を感知し、食欲亢進性ニューロンを活性化して、摂食行動を引き起こすことを明らかにした。

報告によると、空腹時には低血糖(グルコース濃度低下)および食欲亢進性の胃ホルモンのグレリンの上昇により、弓状核のNKAの活性が低下。また、グルコース濃度低下は、弓状核ニューロンに作用してNKAを抑制して細胞を活性化し、またNKA阻害剤ウアバインも細胞を活性化したという。活性化された細胞の大部分は、強力な摂食亢進性神経伝達物質ニューロペプチドY(NPY)とアグーチ関連蛋白(AgRP)を持つ細胞だった。NKA阻害剤ウアバインを脳内/弓状核内へ投与すると、NPY亢進を介して摂食行動を引き起こし、一方NKA活性化剤を投与すると摂食行動を抑制したという。

これらの結果より、視床下部弓状核NKAが空腹・低血糖を感知して、NPY/AgRPニューロン活動を亢進し、摂食行動を起こす、新しい食欲創出機構が明らかになったとしている。同分子は、過食、肥満や糖尿病の新規治療ターゲットとなる可能性があるとして、期待が寄せられる。

▼関連リンク
自治医科大学 研究情報

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 「心血管疾患」患者のいる家族は、うつ病リスクが増加する可能性-京大ほか
  • 早期大腸がん、発がん予測につながる免疫寛容の仕組みを同定-九大ほか
  • 心臓手術後のリハビリや予後にプレフレイルが及ぼす影響を解明-兵庫県立はり姫ほか
  • 糖尿病性神経障害、発症に細胞外基質のコンドロイチン硫酸が重要と判明-新潟大ほか
  • 「リウマチ・潰瘍性大腸炎」治療薬の薬疹リスクアレルを発見-理研ほか