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がん化に伴って細胞の“顔つき”が変わる様子を包括的な糖鎖解析によって解明-北大

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2015年07月07日 PM02:30

がん遺伝子の異常と糖鎖発現の因果関係の網羅的な抽出に成功

北海道大学は7月3日、脳腫瘍の一種である悪性グリオーマのWHO grade I-IVを模倣するモデル細胞で包括的な糖鎖の発現解析を行い、がん原遺伝子やがん抑制遺伝子の異常と糖鎖発現の因果関係の網羅的な抽出に成功したと発表した。この研究は、同大大学院先端生命科学研究院の篠原康郎特任教授、同医学研究科の田中伸哉教授らの研究グループによるもの。


画像はリリースより

脳腫瘍の中の悪性グリオーマは、平均生存期間が約1年と最も予後の悪い腫瘍であり、早期診断に有効なバイオマーカーは今のところないことから、バイオマーカーの同定と有効な治療法の確立が急がれている。グリオーマにおける糖鎖の発現変動はいくつか報告されているが、グリオーマにおいてこれらの糖鎖の発現変動がどの段階で起こるのかは不明であり、これらの糖鎖発現変動の因果関係についてもほとんど分かっていなかった。

悪性度を反映する特異的な糖鎖関連バイオマーカー候補として期待

今回の研究では、細胞がさまざまながん抑制遺伝子やがん原遺伝子の変異を経て、段階的に不死化、足場非依存性増殖能、造腫瘍能やアポトーシス抵抗性などのがん形質を獲得するとするがん多段階発生説に基づき、田中教授らが樹立した正常ヒトアストロサイト(NHA)にhTERT(T)、SV40ER(S)、 H-RasV12(R)、及びmylAKT(A)遺伝子をそれぞれ段階的に導入したグリオーマモデル細胞(NHA/T、TS、TSR、TSRA)を用いて、細胞表面の抗原として最も重要な3種類の複合糖質糖鎖(N-及びO-結合型糖鎖、スフィンゴ糖脂質糖鎖)について、篠原特任教授らが確立した独自の網羅的な糖鎖発現解析法により詳細に解析した。

その結果、総計160種類を超える糖鎖の発現情報(絶対量)を取得。得られた糖鎖発現プロファイルを多変量解析した結果、5種類の細胞は明確に区別されることが明らかになり、糖鎖の発現プロファイルによってモデル細胞のがん化の諸過程を追跡できることが分かったという。

各遺伝子の導入に伴う糖鎖の発現変動は、悪性化に伴って徐々に顕在化するというよりも一過性で多様な変動が多く、このことは、悪性グリオーマの早期診断、グレードや予後の判定、治療効果の判定が特定の糖鎖のモニタリングによってできる可能性を示唆しているという。

研究グループは、これらの知見を踏まえて、今後臨床検体を用いて悪性グリオーマのバイオマーカーの検証と探索を進めていく予定としている。

▼関連リンク
北海道大学 プレスリリース

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