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概日時計が季節による日照時間の変化に対応するメカニズムを解明-理研

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2015年07月06日 AM06:00

がんや生活習慣病、精神疾患とも関連する概日リズムのズレ

理化学研究所は7月1日、脳の視交叉上核の2つの領域にある概日リズムが季節による日照時間の長さで同調性にズレが生じ、概日時計を対応させて季節を読み取っていることを発見したと発表した。この研究は、理研脳科学総合研究センター精神生物学研究チームの内匠透シニアチームリーダーらの国際共同研究グループによるもの。研究成果は、米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Science」(PNAS)オンライン版に6月29日付で掲載されている。

人間の体内時計は、ホルモンの分泌や代謝、睡眠リズムといった概日リズムを制御している。体内環境の概日リズムの異常は、時差ボケや睡眠障害などのリズム障害を引き起こすだけでなく、がんや生活習慣病、精神疾患とも関連していると考えられている。

脳の視床下部にある視交叉上核は体中の概日時計を制御する。これまで視交叉上核の約1万個の神経細胞は、それぞれ約24時間周期のリズムを持ち、それらが同調することで堅固な概日リズムが形成されると考えられていた。しかし、これでは季節による日照時間の変化に概日時計がどう対応しているのかは明らかになっていなかった。

日照時間の変化に関連する精神疾患の解明に期待

研究グループは、概日リズムの形成を担う時計遺伝子の発現量を可視化できる時計遺伝子レポーターマウスを用いて、視交叉上核の概日リズムを画像解析。その結果、視交叉上核の概日リズムは一様に同調しているのではなく、視交叉上核の背側領域と腹側領域の2つの領域に含まれる細胞群で、概日リズムの位相にズレが生じることを解明したという。

さらに、画像データの数学的解析とシミュレーションを組み合わせて解析したところ、この2つのグループの同調性のズレが、夏には反発しあって大きくなり、冬には引き合って小さくなるというように、季節による日照時間の変化に伴って変動することを発見。このような多様性のある同調メカニズムによって、視交叉上核は1日の周期だけでなく、1年の周期も読み取っていることが明らかになったという。

同成果は、概日時計が季節による日照時間の変化に対応するメカニズムの一端を明らかにするとともに、季節性感情障害(季節性うつ病)など、日照時間の変化に関連して発症すると考えられる精神疾患などの解明につながる可能性もあるとしている。(大場真代)

▼関連リンク
理化学研究所 プレスリリース

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