前立腺がんのホルモン療法が思考障害をもたらす
前立腺がん治療としてホルモン療法を受ける男性では、6カ月以内に精神機能の低下がみられ、少なくとも1年以上持続する場合があることが、新たな研究で示唆された。このリスクは、特定の遺伝子変異をもつ男性で特に高かったという。ホルモン療法は、テストステロン値を低下させることで前立腺がん細胞の増殖を抑える治療法である。

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米モフィットがんセンター(タンパ)の博士研究員Brian Gonzalez 氏が率いた今回の研究では、前立腺がん患者58人を対象に、ホルモン療法の開始前、6カ月後、12カ月後に評価を実施し、前立腺摘出術を受けた84人および前立腺がんではない88人と比較した。
その結果、ホルモン療法群には精神機能の低下が認められた。特に遺伝子変異rs1047776を有する男性では、ホルモン療法による精神障害を来す確率が、この変異を持たない男性の14倍であった。
Gonzalez氏は、「ホルモン療法を検討する男性は、精神機能面の副作用について知っておく必要がある」と指摘する。同氏はテストステロン値の変化が思考障害の原因となった可能性があるとの見解を示しているが、ホルモン療法による倦怠感や抑うつが影響している可能性もあると述べている。
この報告は「Journal of Clinical Oncology」オンライン版に5月11日掲載された。
米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院(ボストン)のAnthony D’Amico 氏は、今回の研究は小規模であるため、さらに検証を重ねる必要があると指摘する一方、以前の研究で長期のホルモン療法による数学的能力への影響が認められた例を挙げ、今回の知見にはそれなりの根拠があるとの考えを述べている。ただし、現在実施される短期間のホルモン療法では大きな影響があるとは考えにくく、多数の疑問点もあると同氏は付け加えている。
米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)のDavid Samadi氏は、前立腺がん患者にホルモン療法を実施すべきではないとの見解を示す。ホルモン療法には倦怠感、男性更年期、抑うつなどの副作用のほか、心臓障害の懸念もあると指摘し、最新式の外科手術で前立腺がんを切除すれば、失禁や性機能の副作用も避けられると述べている。
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・Hormone Therapy for Prostate Cancer May Impair Thinking

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