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自然免疫応答を引き起こすタンパク質「TLR9」の立体構造を明らかに−東大と阪大ら

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2015年02月13日 PM04:00

抗ウイルス反応などを引き起こすTLR9

科学技術振興機構(JST)は2月10日、微生物の侵入を感知して自然免疫応答を活性化するTLR9受容体の詳細な立体構造を世界で初めて解明したと発表した。


画像はプレスリリースより

この研究は、東京大学大学院薬学系研究科の清水敏之教授、大戸梅治講師、同医科学研究所の三宅健介教授、柴田琢磨助教、大阪大学大学院工学研究科の内山進准教授、エレナ・クラユヒナ特任研究員らの研究グループによるも。研究成果は、英科学誌「Nature」のオンライン版に2月9日付けで公開されている。

ヒトの自然免疫機構では、TLR受容体と呼ばれるタンパク質が重要な役割を担っている。今回、立体構造を明らかにしたTLR受容体の一種であるTLR9は、微生物由来のDNA配列(CpGモチーフ)を感知することで、インターフェロンなどの産生を促し、抗ウイルス反応などを引き起こす。このため、TLR9はウイルス感染、アレルギーに対する治療薬やワクチンの抗原性補強剤などの標的として注目されていた。しかしながら、TLR9が具体的にどのようにDNAを認識するのかは未解明だった。

抗ウイルス薬やワクチンなどの開発に期待

研究グループは、TLR9の細胞外領域を大量に調製。微生物由来のDNA配列が結合していないTLR9、微生物由来のDNA配列が結合しているTLR9、TLR9の機能を阻害するDNA配列が結合しているTLR9の、3種の立体構造を明らかにした。

その結果、TLR9と微生物由来のDNA配列は、2対2の比率で複合体を形成して、2量体の活性化型を形成することが判明したという。そしてこのDNA配列は、TLR9のN末端側にある溝に結合することで認識されていることが分かった。一方、TLR9とTLR9の機能を阻害するDNA配列は1対1の比率で結合し、2量体になることはなかったという。また、このDNA配列は、TLR9の馬蹄型構造の内側にコンパクトなループのような形で結合していることが判明した。

今回の研究により、TLR9を活性化する、または不活性化するDNA配列との結合様式が分かったことで、ワクチンやウイルス感染、アレルギーなどの治療薬の開発が進展するものと期待される。

▼外部リンク
科学技術振興機構 プレスリリース

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