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慢性肝炎や肝硬変が肝内胆管がんのゲノム異常と発生に強く関与することを証明-理研

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2015年02月04日 PM03:15

肝内胆管がんの全ゲノム情報を解読

理化学研究所は1月30日、理研統合生命医科学研究センターゲノムシーケンス解析研究チームの中川英刀チームリーダー、藤本明洋副チームリーダーらの共同研究グループが、30例の肝内胆管がんの全ゲノム情報を解読し、肝炎ウイルスなどによる慢性肝炎や肝硬変が、肝内胆管がんのゲノム異常と発生に強く関与することを証明したと発表した。なお、この研究は、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC)のプロジェクトの一環として行われた。


画像はプレスリリースより

肝内胆管がんは、原発性肝臓がんのなかで、肝細胞がんに次いで発症が多く、悪性度が高い難治性のがんである。肝臓内の胆石や慢性胆管炎はその発生のリスク因子とされているが、詳細な発生機構は分かっていない。最近、日本やアジアでの疫学研究において、B型肝炎やC型肝炎などの慢性肝炎や、慢性肝炎を経て発症する肝硬変も、肝内胆管がん発生の重要なリスク要因であることが示されていた。

肝内胆管がんの悪性度に関わる遺伝子変異を発見

共同研究グループは、B型肝炎やC型肝炎患者を含む30例の肝内胆管がんの全ゲノム情報を、最新の次世代シーケンサーとスーパーコンピュータを用いて解読。肝内胆管がんに起きているゲノム変異をすべて同定した。次に、同様の全ゲノムシーケンス解析で同定した60例の肝細胞がんのゲノム変異との比較を行った。その結果、肝内胆管がんの全ゲノム上で1つの腫瘍につき平均約4,300か所の変異が発見されたという。それら変異の塩基置換パターンによって、肝内胆管がんは慢性肝炎のある腫瘍とない腫瘍の2つに分類され、慢性肝炎のある腫瘍の塩基置換パターンは、肝細胞がんと類似していたとしている。

また、B型肝炎ウイルスのゲノム配列が、複数の肝内胆管がんのゲノム中に挿入されていることも発見。このことは、慢性肝炎や肝硬変が、肝内胆管がんのゲノム異常を引き起こし、その発がんに強く関与することを示しているという。

さらに、肝内胆管がんの複数の変異遺伝子は、肝細胞がんで高頻度に変異している遺伝子と一致していることが判明。一方で、肝外胆管がんで特異的に見つかる遺伝子の変異が肝内胆管がんでも見つかり、これら遺伝子の変異のある肝内胆管がんは、より悪性度が高く、生存率が低いことが分かったという。

研究グループは、これらゲノム情報を通して、肝臓がんや胆管がんの詳細な分子生物学的な分類が進展し、その分類に応じて治療方針を決定する個別化医療が進むのではと述べている。また、今回は肝内胆管がんの悪性度に関わる遺伝子変異が複数同定されており、早期診断法や効果的な治療法がない肝内胆管がんに対して、新規の治療法や診断法の開発への貢献が期待されている。

▼外部リンク
理化学研究所 プレスリリース

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