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深在性真菌症創薬の新しい標的、エルゴステリルグルコシド分解酵素を発見-九大

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2015年01月19日 AM06:00

EGCrP2を発見し、エルゴステリルグルコシド代謝機構を解明

九州大学は1月13日、同大大学院農学研究院の伊東信教授、生物資源環境科学府博士後期課程3年の渡辺昂氏ら研究グループが、エルゴステリルグルコシド分解酵素(EGCrP2)を発見し、深在性真菌のエルゴステリルグルコシド代謝機構を初めて解明したと発表した。この研究成果は、米国生化学・分子生物学会誌「The Journal of Biological Chemistry」に掲載された。


画像はプレスリリースより

日本でも年々増え続けているカンジダ症、アスペルギルス症、クリプトコッカス症、ムコール症などの深在性真菌症に対しては現在、エルゴステロールやその合成系、核酸合成系などを標的とした治療薬が開発されているが、耐性菌の出現や副作用などから、新しい治療薬の開発が強く望まれている。

深在性真菌には「エルゴステリルグルコシド」という糖脂質が存在するが、その代謝機構は今まで未解明だった。特に、エルゴステリルグルコシド分解酵素は、エルゴステリルグルコシド代謝のミッシングリンクとされていた。

新しいコンセプトに基づく深在性真菌症治療薬の開発が可能に

研究グループは2012年に、エイズなどの免疫疾患の患者を中心に発症する深在性真菌症の原因菌クリプトコッカス・ネオフォルマンスの糖脂質(グルコシルセラミド)を分解する酵素EGCrP1を発見していた。今回の研究では、EGCrP1のホモログが深在性真菌症原因菌に広く存在することを見出し、その性質を調査。その結果、このホモログ(以下、EGCrP2)は、EGCrP1が分解できないエルゴステリルグルコシドを分解できることが分かったという。

また、EGCrP2の遺伝子を欠損させたクリプトコッカスを作製したところ、エルゴステリルグルコシドが液胞と呼ばれる細胞内小器官に蓄積し、細胞分裂が十分に行えなくなることも判明。これらの結果は、EGCrP2がエルゴステリルグルコシド代謝のミッシングリンクであった、エルゴステリルグルコシド分解酵素であることを示すものとしている。

今回、深在性真菌症原因菌のエルゴステリルグルコシド代謝系が解明されたことにより、新しいコンセプトに基づく治療薬の開発が可能になった。さらに、EGCrP2はヒトには存在せず、4大真菌症すべての原因菌に存在するので、副作用が少なく、適用範囲の広い真菌症治療薬の開発につながることが期待できるという。

研究グループは今後、EGCrP2の特異的な阻害剤の開発に尽力するとともに、EGCrP2の結晶構造解析を進め、酵素の触媒機構と阻害剤の阻害機構の詳細を明らかにしていく予定としている。

▼外部リンク
九州大学 プレスリリース

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