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患者由来のiPS細胞で肥大型心筋症を悪化させる因子の同定に成功−慶大

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2014年11月19日 PM06:15

特異的な治療方法がない肥大型心筋症

慶應義塾大学は11月12日、同大学医学部の湯浅慎介専任講師、福田恵一教授、田中敦史大学院生らの研究グループが、3名の肥大型心筋症患者からiPS細胞を作製し、病気を悪化させる因子の同定に成功したと発表した。


画像はプレスリリースより

この研究成果は、米化学雑誌「Journal of American HeartAssociation」オンライン版に11月11日付での公開されている。

肥大型心筋症は、筋原線維を構成する遺伝子の変異によって起こる遺伝性疾患で、有症状者は全国推計21,900人、人口10万人あたり17.3人(平成11年厚労省調査より)であるが、特異的な治療方法は無く、開発が待ち望まれている。

エンドセリン受容体拮抗薬に期待

研究グループはまず、肥大型心筋症のiPS細胞から心筋細胞を作製。患者由来の心筋細胞に筋原線維の配列の乱れが存在することを見出した。さらに、病気を悪化させる因子を探索した結果、エンドセリン-1というホルモンが、筋原線維の配列の乱れを大きく増加させることを発見したとしている。

筋原線維の配列の乱れを有する心筋細胞は、収縮・拡張でも乱れを生じ、病気の原因となる可能性が考えられた。一方、エンドセリン-1 は、心筋細胞にあるエンドセリン受容体を介し、心筋細胞に働きかけていることが知られている。そこで研究グループがエンドセリン受容体拮抗薬を投与すると、心筋細胞の筋原線維の配列の乱れが改善し、収縮の乱れが改善されることを発見したという。

これより、肥大型心筋症患者においては、生まれつき心筋細胞筋原線維の配列の乱れが僅かに存在しており、エンドセリン-1の影響により増悪していくことが想定されるという。

エンドセリン受容体拮抗薬は、既に肺動脈性肺高血圧症の治療に用いられている薬剤で、人体への投与の安全性が知られている。今後は、実際にこの薬剤が肥大型心筋症の治療薬になるか検討する必要があるが、有効な特異的治療方法となることが期待される。

▼外部リンク
慶應義塾大学 プレスリリース

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