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理研 頭皮の毛根細胞から精神疾患の診断補助バイオマーカーを発見

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2014年09月19日 PM12:45

多くの遺伝子が脳細胞と共通して発現している毛根細胞

独立行政法人理化学研究所は9月12日、ヒトの頭皮の毛根細胞に、脳の細胞と共通する遺伝子が発現していることを発見し、これらの遺伝子発現量の変化をモニターできる可能性があると発表した。


画像はプレスリリースより

この研究成果は、理研脳科学総合研究センター 分子精神科学研究チームの前川素子研究員、吉川武男チームリーダーと複数の大学・研究所からなる共同研究グループによるもの。遺伝子発現量の変化は、統合失調症や自閉症などの精神疾患の早期診断を助けるバイオマーカーとなり得るものであり、非侵襲的かつ簡便に、客観的な評価を可能にするとみられる。

研究グループは、頭皮の毛根細胞が発生学上、脳の細胞と同じ外胚葉に由来することに着目し、統合失調症や自閉症の人から毛髪を採取し、解析を行った。すると、脳だけで発現するとされていた遺伝子の多くが毛根細胞でも発現していることが分かったという。そこで精神疾患患者の死後脳を用いた解析で発現量変化が報告されている遺伝子群について、精神疾患群と対照群の各毛根細胞でそれらの発現量を測定した。

統合失調症ではFABP4遺伝子、自閉症ではCNTNAP2遺伝子の発現量が低下

まず、いずれも統合失調症患者群と対照群を含む、「探索」サンプルグループと「再現」グループを設け、毛髪を採取して計22遺伝子の発現変化を調べた。すると、「探索」グループサンプルで7つの遺伝子の発現量に違いが認められ、なかでもFABP4遺伝子の発現量が、患者群では対照群に比べ約40%低下していたという。「再現」グループサンプルでも同様の低下が確認されたとしている。

FABP4遺伝子の発現量低下は、年齢や性別、体重、食後時間、BMI、服薬、喫煙習慣などに影響されないこと、また統合失調症発症後の期間にも影響されないことも示された。よって、この発現量に注目することで、ごく初期から統合失調症を客観的かつ正確に評価できる可能性がある。

自閉症の人と対照群の毛根細胞でも、同様に遺伝子の発現量変化を調べたところ、自閉症の場合、対照群と比べCADPS2遺伝子とCNTNAP2遺伝子の有意な低下が確認されたという。だがCADPS2遺伝子については、年齢との相関がみられたため、その後の解析から除外し、CNTNAP2遺伝子にのみ注目。すると、高い感度および特異度で自閉症を検出できることが判明したとしている。

研究グループは今回の結果を受け、頭皮の毛根細胞の遺伝子発現測定は、生きた脳の状態を反映する非侵襲的で簡便なバイオマーカー診断法の基盤となる可能性が高いと結論づけた。また、今後精神疾患の予防法開発や早期治療導入の判定、新しい視点からの創薬につなげられる可能性もあるとしている。(紫音 裕)

▼外部リンク
独立行政法人理化学研究所 プレスリリース

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