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阪大らの研究グループ 虫垂の免疫学的意義を解明

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2014年04月22日 PM03:00

無用の長物ではなかった虫垂

大阪大学大学院 医学系研究科感染症・免疫学講座の竹田潔教授、東京大学、近畿大学、理化学研究所の共同研究グループは4月10日、今まで不必要な組織と考えられていた虫垂のリンパ組織の免疫学的意義を解明したと発表した。また同研究は英科学誌「Nature Communications」のオンライン版に同日付で公開された。


(画像はプレスリリースより)

これまで虫垂は、長い間人間の体にとって明確な必要性を認められる組織とは考えられていなかった。虫垂炎を起こしやすいことから、開腹手術の際、炎症が認められなくても切除されてしまうことも多々あった。

大腸型の腸内細菌叢パターンを示さず

同研究グループは、虫垂にはリンパ球の集まった「虫垂リンパ組織」があり、何らかの免疫学的機能を有していると考え、典型的な腸管関連リンパ組織のパイエル板と虫垂リンパ組織の構造を比較、分析した。そしてどちらのリンパ組織も同じような免疫誘導組織であると予想されたことから、無菌マウスによる実験を開始。虫垂を切除したマウスと虫垂を持つマウスを比較したところ、虫垂を切除したマウスは、大腸におけるIgA産生細胞の数の増加が顕著に遅れていることが判明した。

またIgAは腸内細菌叢のバランスを維持する細胞であることから、虫垂切除マウスと虫垂を持つマウスの大腸内細菌叢を調べたところ、虫垂切除マウスにおいては、大腸型の腸内細菌叢のパターンを示さないことが明らかとなったという。さらに、パイエル板および虫垂リンパ組織のIgA陽性細胞がどこへ向かうのかを調べた結果、パイエル板は小腸に移動してIgA陽性細胞を産生するリンパ組織であるのに対し、虫垂リンパ組織は小腸および大腸に移動してIgA陽性細胞を産生するリンパ組織であることが判明したという。

炎症性腸疾患や腸管感染症の治療につながる研究

同研究の結果、虫垂リンパ組織が、大腸に動員されるIgA陽性細胞を産生することが明らかとなり、虫垂がなくなると、大腸の腸内細菌叢のバランスがくずれるという結論を得た。近年は、腸内細菌叢の変化により、腸管感染症に対する感受性の亢進や炎症性腸疾患の発症や、虫垂の切除による炎症性腸疾患発症感受性の変化も報告されているという。

虫垂リンパ組織のIgA細胞が、腸内細菌叢のバランスの維持にきわめて重要な抗体であることをふまえて、今後、腸管免疫系の制御法が開発され、炎症性腸疾患や腸管感染症の治療につながることが期待されるとしている。(白井蓮)

▼外部リンク

独立行政法人 科学技術振興機構 プレスリリース
http://www.jst.go.jp/pr/announce/

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