医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 広がる血管内治療の選択肢 「Solitaire FR」からみる急性期虚血性脳梗塞治療

広がる血管内治療の選択肢 「Solitaire FR」からみる急性期虚血性脳梗塞治療

読了時間:約 4分7秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2014年04月02日 PM04:00

現在、急性期脳梗塞治療の中心となっているのは、t‐PAを用いた血栓溶解療法だ。しかしt‐PAは非常に有効である一方で「発症から4.5時間以内」「脳出血のリスクがないこと」といった条件があるため、治療の適応外となる患者も多いという。こうしたケースでは、カテーテルと血栓除去デバイスを使用した血管内治療()が行われる。

近年、次々と新たな血栓除去デバイスが開発されており、その中でも2013年12月にわが国で薬事承認を取得した新型血栓除去デバイス「Solitaire(TM) FR」は、脳血管内治療における機械的血栓回収療法の新しい選択肢として有効性が期待されている。3月5日に行われたコヴィディエン ジャパン株式会社主催によるセミナーにて、Solitaire FRの特性や開発の経緯、臨床結果などが説明された。その模様をお伝えする。

臨床試験で示された有効性と安全性


Solitaire(TM) FR(セミナーにて撮影)

Solitaire FRはコヴィディエンが開発した血栓除去デバイスで、真ん中にスリットが入った筒状の形状をしており(オープンスリット構造)、シートを丸めたような構造(オーバーラッピングステント構造)となっている。こうした独自のパラメトリックデザインにより、製品コンセプトであるRestore. Retrieve. Revive.(早期血流回復・高い血栓回収能力・良好な転帰獲得)を実現している。

Solitaire FRは多数の臨床試験が行われており、効果と安全性がエビデンスに裏付けられているのも特徴だ。MerciとSolitaire FRとを比較したSWIFT試験※1では、Solitaire FRを用いた再開通療法の優位性が認められ、転帰良好率、死亡率についても有意な結果が得られており、血管内再開通療法の前向き登録試験であるSTAR試験※2においては、再開通率79.2%、転帰良好率57.9%、死亡率6.9%といった結果も出ている。さらに、海外でSolitaire FR流通後に行われた後向き登録試験(NASA試験※3)でも、それまでの臨床試験と同等の再開通率が示されているという。

なお、Solitaire FRの対象は、急性期虚血性脳梗塞(原則として発症後8時間以内)において、t‐PAが適応外、またはt‐PAの経静脈投与により血流再開が得られなかった患者とされており、同社では2014年夏頃の上市を予定している。

急性期虚血性脳梗塞治療の現状と期待


神戸市医療センター中央市民病院 脳神経外科部長
坂井信幸氏

続いて、「急性期虚血性脳梗塞治療の現状と今後の期待」と題し、Solitaire FRの登場によって変化する血管内治療の今後について、坂井信幸氏(神戸市医療センター中央市民病院 脳神経外科部長)が講演した。

日本でrt‐PA(Alteplase)が認可されたのは2005年。rt‐PAは、社会復帰率32.5%、家庭復帰率42.5%と、効果の高い治療法である一方、適応条件があるために使用できる患者が少ない。坂井氏は、実際に神戸市立医療センター中央病院 脳卒中センターにおける2005~2010年までのrt‐PA使用率が、全脳卒中では3%、虚血性脳卒中では4.5%であったことを挙げ、カテーテルを用いた脳血管内治療に期待がかかっていると語った。

「現在国内で承認されている血栓回収デバイスの1つであるMerciリトリバーについては国内でも研究※4が行われ、近位大血管、特に内頚動脈閉塞で有効性が高いことがわかっていますが、Solitaire FRなどのステント型血栓回収デバイスは、従来のものよりも血栓回収能力が高く、血管を痛めないことがわかってきています。ステント型血栓回収デバイスには、血栓回収中であっても網が開くことによって血流が入り、一時的な血流再開が得られるという非常に大きな特徴があります。これが患者の転帰を良好にしている原因だろうとされています」(坂井氏)

また、2012年の国際脳卒中学会(ISC)で血管内再開通療法について3つの研究結果が発表されたが、そのどれもが血管内治療の有効性を示せなかったという。しかし研究で使用された機器が古いものであったことや、脳動脈閉塞の評価がないまま登録した症例が半数以上であったことから、坂井氏は、血管内治療のエビデンスの確立はongoing(進行中)でこれからの課題であると述べるとともに、再開通なしでは患者の自立は得られないが、再開通と患者の転帰は直結しないため、治療適応を充分に選ぶことが非常に重要であると強調した。(

*1 Saver JL, et al. Solitaire flow restoration device versus the Merci Retriever in patients with acute ischemic stroke (SWIFT): a randomised, parallel-group, non-inferiority trial. Lancet 380:1241-1249, 2012.
*2 Pereira VM, et al. Prospective, Multicenter, Single-Arm Study of Mechanical Thrombectomy Using Solitaire Flow Restoration in Acute Ischemic Stroke. Stroke. 2013 44(10):2802-7.
*3 Zaidat OO, et al. North American Solitaire Stent Retriever Acute Stroke registry (NASA): post-marketing revascularization and clinical outcome results. J Neurointerv Surg. 2013 Sep 23. doi: 10.1136/neurintsurg-2013-010895.
*4 Endo K, Koga M, Sakai N, et al: Stroke outcomes of Japanese patients with major cerebral artery occlusion in the post-alteplase, pre-MERCI era. J Stroke Cerebrovasc Dis 22: 805-810, 2013.

▼外部リンク

コヴィディエン ジャパン株式会社 プレスリリース
http://www.covidien.co.jp/

コヴィディエン ジャパン株式会社
http://www.covidien.co.jp/

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 「心血管疾患」患者のいる家族は、うつ病リスクが増加する可能性-京大ほか
  • 早期大腸がん、発がん予測につながる免疫寛容の仕組みを同定-九大ほか
  • 心臓手術後のリハビリや予後にプレフレイルが及ぼす影響を解明-兵庫県立はり姫ほか
  • 糖尿病性神経障害、発症に細胞外基質のコンドロイチン硫酸が重要と判明-新潟大ほか
  • 「リウマチ・潰瘍性大腸炎」治療薬の薬疹リスクアレルを発見-理研ほか