医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医薬品・医療機器 > ガイドライン改訂が抗凝固療法に与えた影響とは

ガイドライン改訂が抗凝固療法に与えた影響とは

読了時間:約 3分27秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2014年03月25日 PM05:03

2014年1月に5年ぶりの改訂となる、心房細動治療(薬物)ガイドライン2013年改訂版が発表された。大きな変更点の1つとして、新規経口抗凝固薬(:Novel Oral Anticoagulants)が追加され、現在日本で承認されている3剤と未承認のエドキサバンについて、指針とエビデンスレベル、推奨度が示されている。また、3月1日よりアピキサバン(製品名:)の長期処方が可能となった。これらを受け、ガイドライン改訂におけるNOACの位置づけについて、ブリストル・マイヤーズ株式会社とファイザー株式会社主催によるセミナーが開催された。

年齢・体重・腎機能に考慮した適切な心房細動予防を


国立病院機構 大阪医療センター 臨床研究センター長
是恒之宏氏

2012年の人口動態統計の概況によると、脳梗塞による年間死亡者数はおよそ7万2千人。そのうちの多くが心原性脳塞栓症であるという。心原性脳塞栓症の主な原因とされる心房細動との合併頻度は、60歳を超えると7割以上になる。「心房細動の場合、高齢であること自体が塞栓症のリスクです。また、高齢になると肝機能や腎機能の低下、低体重がみられることから、今後、超高齢社会の日本においては、年齢・体重・腎機能に考慮した適切な心房細動予防が求められるでしょう」と登壇した是恒之宏氏(国立病院機構 大阪医療センター 臨床研究センター長)は話す。

高齢・低体重・腎機能低下は抗凝固療法に伴う、重大な出血関連因子となる。是恒氏は、ワルファリンを対照とした3剤の大規模試験(ダビガトラン:RE-LY試験※1、リバーロキサバン:ROCKET AF試験※2:ARISTOTLE試験※3)についての「年齢別」「体重別」「腎機能別」サブグループ解析を紹介。アピキサバンはどのサブ解析においてもワルファリンに対して一貫した有効性・安全性が示されたことから、超高齢社会となる日本においてはニーズに沿った薬剤だろうと述べた。さらに、新ガイドラインにおいてアピキサバンは、CHADS2スコア1点・2点以上で「推奨」とされる、唯一のクラスI・エビデンスレベルAのNOACであり、長期処方が解禁となったことで、使用されるケースは増えていくのではないかと語った。

脳卒中の視点から見た心原性塞栓症


国立病院機構 九州医療センター 脳血管・神経内科科長
矢坂正弘氏

続いて登壇した矢坂正弘氏(国立病院機構 九州医療センター 脳血管・神経内科科長)は、脳卒中の視点から心原性塞栓症について語った。「心原性脳梗塞は、発症すると重症となるケースが多く、ノックアウト型脳梗塞とも呼ばれています。また、慢性期の再発率は年間12%であることも明らかになっています。ひとたび発症すれば重症となり再発もしやすい心原性脳梗塞は、十分な抗凝固療法による確実な予防が重要です」(矢坂氏)

しかし、抗凝固療法で長く使用されてきたワルファリンは有効な薬である一方で、脳梗塞予防と頭蓋内出血予防がトレードオフとなり、両立が難しい面があった。対して、近年登場したNOACは管理が容易であり、ワルファリンを対照とした大規模試験においては、脳梗塞予防効果・大出血に同等あるいは優位性がみられ、何より頭蓋内出血が著しく減少したという結果が出ている。

矢坂氏は、アピキサバンの大規模試験であるアリストテレス試験※3を詳しく説明。試験結果ではワルファリンと比較して、脳卒中と全身性塞栓症の発生が21%、死亡11%、大出血31%、特に頭蓋内出血は58%低下していた。さらに出血関連因子に対するサブ解析で、どの関連因子を有していても、ワルファリンと比較して脳卒中・全身性塞栓症予防効果が高く、大出血が少なかったことが示されたのは、特筆すべき点と語った。(QLifePro編集部)

*1 Connolly SJ, Ezekowitz MD, Yusuf S, et al. RE-LY Steering Committee and Investigators. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151.
*2 Patel MR, Mahaffey KW, Garg J, et al. ROCKET AF Investigators. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-891.
*3 Granger CB, Alexander JH, McMurray JJ, et al. ARISTOTLE Committees and Investigators. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-992.

▼外部リンク

心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)
※2014年3月25日、日本循環器学会HP閲覧、最新情報はhttp://www.j-circ.or.jp/guideline/をご確認下さい
http://www.j-circ.or.jp/guideline/

ブリストル・マイヤーズ株式会社 プレスリリース
https://www.bms.co.jp/press/

ファイザー株式会社 プレスリリース
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医薬品・医療機器

  • 全身型重症筋無力症治療薬ヒフデュラ配合皮下注を発売-アルジェニクス
  • バビースモ、網膜色素線条P3試験で主要評価項目達成-中外
  • 婦人科疾患の診断や不妊治療に有用な免疫検査パネルを発売-シスメックスほか
  • 新型コロナの次世代 mRNA ワクチン「コスタイベ筋注用」、国内第Ⅲ相試験で既存オミクロン株対応2価ワクチンに対する優越性検証を達成-Meiji Seika ファルマ
  • SGLT2阻害薬、糖尿病関連腎臓病の進行を抑える新たな仕組みを発見-岡山大ほか