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樹状突起の形態形成を決定する分子メカニズムの一端が明らかに

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2013年11月12日 PM05:37

理化学研究所の研究チームが発見

独立行政法人理化学研究所は11月1日、同研究所の理研脳科学総合研究センター視床発生研究チーム下郡智美チームリーダー、松居亜寿香研究員らの研究チームが、大脳皮質内における樹状突起の形態形成を決定する分子メカニズムの一端を、マウス実験で明らかにしたと発表した。

この研究成果は、米科学誌「Science」オンライン版に現地時間の10月31日付で掲載されている。

神経細胞は、情報を伝える軸索と、それを受け取る樹状突起からなり、それぞれが正しい場所で結合して神経回路が形成される。このとき、無駄な樹状突起を除去し、入力の多い方向に枝分かれを増やしていくことで、効率的で正しい神経回路の形成がなされていくが、このメカニズムがうまく機能しないと、混線などが生じ、高次機能障害につながる可能性がある。このメカニズムはヒトの正常な脳機能の維持において、きわめて重要なものであるが、その詳細は明らかになっていない。

(画像はプレスリリースより 上:通常マウス 下:Btbd3阻害)

遺伝子Btbd3が余分な樹状突起の除去を決定

研究チームは、まずマウスの大脳皮質の体性感覚野にあり、ヒゲからの感覚情報を処理する「バレル皮質」で、余分な樹状突起を除き、残った樹状突起の枝分かれを増やす神経細胞に着目。この神経細胞で特異的に発現している遺伝子「Btbd3」を見出し、その機能を阻害した。すると、本来非対称な形態となるはずの樹状突起が対称な形態を維持したままであったため、このBtbd3が不要な樹状突起の見極めと除去、枝分かれの増加などにおいて、重要な役割を果たしていることが分かったという。

さらにマウスとは異なり、感覚情報よりも視覚情報を多く利用するフェレットを用いて、その視覚野を対象にした同実験を行ったところ、Btbd3が深く関わっているという同様の結果が得られ、異なる動物の大脳皮質でも、この分子メカニズムが機能していると確認されたという。

これらの結果から、大脳皮質内での神経細胞の余分な樹状突起の除去を決定し、入力を多く受ける方向にのみ枝分かれを増加させていくことに、遺伝子Btbd3が重要な働きをもつことが分かり、樹状突起の形態形成を決定する分子メカニズムの一端が明らかとなった。また、このメカニズムがマウスとフェレットという、異なる種のあいだでも共通しており、種を超えた保存が確認された点も大きな成果といえるだろう。

研究チームでは、今後さらに過剰な樹状突起が残った場合、どのような脳機能障害をもたらすのか研究を進めていくという。そしてこうした一連の成果が、ヒトの精神疾患メカニズムの解明などにつながるものと期待している。(紫音 裕)

▼外部リンク

独立行政法人理化学研究所 プレスリリース
http://www.riken.jp/pr/press/2013/

Science : BTBD3 Controls Dendrite Orientation Toward Active Axons in Mammalian Neocortex
http://www.sciencemag.org/content/early/2013/10/30/

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