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学歴と病気の不思議な関係 多発性硬化症

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2013年07月06日 PM07:13
多発性硬化症とは

多発性硬化症とは、脳や脊髄の神経の病気。炎症によって神経細胞の一部が壊される「脱髄」という状態が起こることで、神経細胞同士のコミュニケーションがうまく出来なくなってしまうのです。この結果、麻痺やしびれが起こります。炎症と脱髄のメカニズムはまだ明らかになっていませんが、免疫の異常と考えられています。

(画像はイメージです。)

日本では、5000人前後の患者さんが苦しんでいる特定疾患認定の難病です。女性に多く、八割方が10代後半から20代で発症します。

認知機能に障害が起こることも知られています。これまでの調査で、ボキャブラリーが豊富な人では、障害の度合いが少ないことが知られていましたが、今回イタリアの調査結果で、学歴が高くなるにつれて多発性硬化症の症状の度合いが低くなるという事実が指摘されました。論文はRestorative Neurology and Neuroscienceに掲載されました。

え?高学歴だとリスク低下??

日常生活での頭(脳)の使い方にも影響があるのではないかと目をつけた調査チームは、今回は、ボキャブラリーではなく、学歴や職歴に注目しました。仕事の内容に関しては頭脳労働者は、アルツハイマー病のリスクを減らすという報告もあるため、認知機能に対するプラスの影響があると踏んだのです。

50人の多発性硬化症の患者さんを対象に調査を行いました。50人のうち、高校教育かこれより低い学歴の人が17人、33人が大学教育を受けていました。また、全員が、座り仕事についていましたが、単純作業をしている人と、頭脳労働をしている人がいました。高卒以下で単純作業、高卒以下で頭脳労働、大卒以上で頭脳労働の3つに分けました。

すると、高卒以下の人たちは単純作業でも、頭脳労働でも、認知機能の評価の結果に差は見られませんでしたが、同じ頭脳労働をしている人たちでは大卒以上の人の方が認知機能の評価結果が良かったのです。このことから、仕事での頭の使い方とは別に学歴が何らかの影響を及ぼすことが分かりました。なぜ、学歴が影響するのかは明らかではありません。

日常生活と病気の関係にもっと焦点があてられそう

10代に戻って勉強することは、大人となった私たちにはかなわないことですが、将来の多発性硬化症にかかるリスクを予測したり、自覚症状について前もって知識を得て、病気の早期発見に努めるなど、今後様々な方法で健康管理に活かすことができそうです。

また、これを機に他の脳神経の病気についても、学歴や仕事、そして頭の使い方といった日常生活の一面と病気との関係に関する調査も進みそうですね。これまで学歴は、将来の仕事や安定や収入のためと考える人が多くいましたが、実は健康のためにもなるのかもしれません。(唐土 ミツル)

▼外部リンク

Education protects against cognitive changes associated with multiple sclerosis.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23735315

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