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東大 体内で白血球を観察できるイメージング装置を開発

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2013年05月31日 PM08:13

分解能の高い装置を開発

東京大学の研究グループは手術をしないでマウス体内の白血球の動きを観察することに成功した。開発した装置を免疫反応やがん細胞の観察に応用すれば薬のスクリーニングに役立つと考えられる。

病気の多くは細胞の異常に由来するので細胞の観察が重要になる。しかし、内視鏡、超音波、CT、MRI、PETはいずれも分解能が低い。同グループは光学顕微鏡と強い蛍光を発する量子ドットによる高速イメージング装置を開発したが、マウスを切開すると出血や免疫細胞の活性化で細胞本来の姿を観察できなかった。

そこで体外に取り出さずに細胞や分子を鮮明に観察できるイメージング技術の開発に着手した。まず皮膚の吸収の少ない長波長の蛍光を発する量子ドットで像を明るくし、レーザーパワーとレンズの集光度を上げ顕微鏡の倍率を下げた。生体の屈折率に近いシリコンオイルを使い、観察対象を厚さの薄いマウスの耳(耳殻)にした。白血球の運動能が高い好中球を観察するために、好中球に結合する抗体を量子ドットに結合させて静脈注射した。

細かい細胞の動きを観察

その結果、蛍光体の結合した好中球の動きを細かく観察できた。耳の血管内を循環している好中球は、耳に炎症がおこると壁付近に結合した後、血管から抜け出し高速に動いていた。好中球内部の小胞も不規則ながら高速に移動した。以上の動きから好中球が運動を早めて患部にたどり着く時間を短くしていると考えられた。

分解能の高いイメージング装置で細胞の動き、機能を高精度に観察することが可能になった。今後、免疫細胞の生体内機能やがん細胞の様子を観察できれば、薬剤投与による細胞の反応も明らかになる可能性がある。今回、脱毛剤を耳に塗布すると好中球が活動する様子も観察しているので、薬物反応の観察に適したシステムと期待される。(馬野鈴草)

▼外部リンク

東京大学プレスリリース
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/

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