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セレコキシブはロキソプロフェンよりも消化性潰瘍の発現瀕度が低い

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2013年02月21日 PM01:14

関節リウマチではロキソプロフェンが第一選択薬?

非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)では、服用に伴い胃十二指腸潰瘍を含む消化器障害の発現頻度が多いことが臨床現場では問題視されている。
一般にNSAIDsは、慢性的炎症反応で過剰生産されるプロスタグランジンE2(PGE2)の産生を触媒するシクロオキシゲナーゼ(COX)の活性を阻害する薬剤。PGE2は胃粘膜保護作用も有し、COX活性の阻害はこの作用を低下させ、胃腸障害につながる。

また、近年の研究からはCOXにはCOX-1、COX-2、COX-3があり、炎症反応時はCOX2のみが過剰になるため、COX-2のみを抑制するNSAIDsであるCOX-2阻害薬が臨床現場に登場している。一方、従来型のNSAIDsでは副作用対策としてプロドラッグ化が進んできた。
しかし、日本国内では長らく使用されてきた従来型NSAIDs(プロドラッグ)が重用され、なかでもロキソプロフェンが最も使われており、日本リウマチ学会が策定した治療ガイドラインでもNSAIDsでは同薬が第一選択薬となっている。
このほど日本医科大学大学院消化器内科学教授の坂本長逸氏らは、ロキソプロフェンとCOX-2阻害薬のセレコキシブを直接比較する国内多施設共同試験から、セレコキシブの方が服用時の胃十二指腸潰瘍などの発生瀕度が低いことを明らかにした。この試験に関する論文は2012年12月の「Alimentary Pharmacology and Therapeutics」Vol.37に掲載された。

国内初の本格的なNSAIDs間の比較試験

試験は多施設二重盲検無作為化プラセボ比較対照試験で行われ、国内でプロドラック型NSAIDsとCOX-2阻害薬の比較に関して同種形式で行われた初めての試験だ。
最終登録症例は40~74歳(中央値57.5歳)までの健常ボランティア189例。セレコキシブ群(1回100mg、1日2回)とロキソプロフェン群(1回60mg、1日3回)に各76例、プラセボ群37例が割り付けられた。投与期間は14日間で、初日のみ夕食後の1回投与とした。
なお、対象は内視鏡検査を受け、潰瘍、びらん、11ヶ所以上の点状出血があるもの、食道、胃、十二指腸、幽門などでの消化管出血が進行中の症例、胃十二指腸潰瘍の既往例、試験開始前4週間以内に胃粘膜などに影響のある薬剤、セレコキシブなどのNSAIDs、アスピリン、制酸薬、消化性潰瘍治療薬、ステロイド、抗菌薬などを服用していた症例も除外した。
主要評価項目はセレコキシブ群とロキソプロフェン群での14日間の投与後に内視鏡的に診断された胃十二指腸潰瘍とし、胃、幽門、十二指腸で1個以上の潰瘍が確認された場合と定義した。また、副次評価項目としては、プラセボも含めた3群での(1)胃十二指腸の潰瘍とびらんの発生頻度と個数(2)患者の自覚症状も含めた有害事象の発生頻度—の2つ。なお、潰瘍は明確な深さを持つ直径3mm以上のものとした。
なお、3群間で対象者の年齢、性別比、身長、体重、BMI、ヘリコバクター・ピロリ陽性比率といった患者背景に差は認められていない。

安全性、忍容性が高いセレコキシブ

主要評価項目である胃十二指腸潰瘍の発生頻度は、セレコキシブ群1.4%、ロキソプロフェン群27.6%、プラセボ群2.7%で、セレコキシブ群とロキソプロフェン群でのオッズ比は0.0454(95%信頼区間:0.0027-0.2570)。セレコキシブ群はロキソプロフェン群と比べ、有意に潰瘍発生頻度が低かった(p<0.0001)。
一方、副次評価項目では、胃十二指腸潰瘍とびらんを併せた発生頻度はセレコキシブ群36.5%、ロキソプロフェン群53.9%、プラセボ群24.3%。対象者1人当たりの胃十二指腸潰瘍発生個数はセレコキシブ群0.0±0.12個、ロキソプロフェン群0.7±1.66個、プラセボ群0.0±0.16個で、ロキソプロフェン群に比べ、セレコキシブ群は有意に低く(p=0.0001)、対象者1人当たりの胃十二指腸びらん発生個数もセレコキシブ群0.9±1.80個、ロキソプロフェン群1.3±1.89個、プラセボ群0.4±0.79個で、同様にロキソプロフェン群に比べ、セレコキシブ群は有意に低かった(p=0.0293)。
全体の有害事象発生頻度はセレコキシブ群34.2%、ロキソプロフェン群51.3%、プラセボ群21.6%で、セレコキシブ群はプラセボ群に比べれば発生頻度は高かったが、ロキソプロフェン群に比べて低かった。有害事象で最も多かったのはびらん性胃炎で、重篤な有害事象は各群とも報告されていない。
今回の試験については試験期間が通常のNSAIDs服用期間に比べて短いことや対象者が健常ボランティアという制約はあるものの、セレコキシブは胃十二指腸潰瘍の発生頻度が低く、その他の有害事象を含めてもロキソプロフェンよりも安全性は高いと考えられた。(QLifePro編集部)

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