スタチンを使用しているがん患者は死亡する確率が低い
以前からスタチンを使用していたがん患者は、使用したことがない患者と比べると、全死因死亡率とがん関連の死亡率が低いということがわかった。この研究はデンマークのコペンハーゲン大学病院のSune F. Nielsen氏らが明らかにした。論文は、NEJM誌2012年11月号に載っている。
スタチンというのはコレステロールの合成を防ぐだけでなく、蛋白質のプレニル化も阻害してしまう。コレステロールは哺乳類の細胞膜では基本的な成分であり、増殖していくためには絶対に必要なものである。プレニル化というのは、がんが進行していくことに関係性があると考えられている。細胞ではスタチンが細胞周期の進行を止めてしまうことや、がん細胞の放射線の感受性を良くすることが明らかにされていた。

(写真はWikiメディアより引用)
がん患者のスタチン使用についての実験
そのためスタチンを患者に投与すれば、がん細胞の増殖や転移を抑制できるのではと考えられた。しかしスタチンによる心血管疾患リスクの低減効果を検証するための大規模臨床試験においては、スタチンはがん患者やがん関連の死亡には影響していないということがはっきりしていた。
著者らはがん患者の大規模な集団対象の研究を行えば、スタチンを使用するということと死亡の関連がわかるのではないかと考えた。そこでデンマークの住民に関するデータを利用して、がんの診断前からスタチンを使用していた患者と、スタチンをこれまでに一度も使ったことがない患者の死亡リスクを比較した。
検証の結果、スタチンを使用していなかったがん患者を比べると、スタチンを使用したことがあるがん患者の方が生存している数が多いということがわかった。
▼外部リンク
コペンハーゲン大学病院
http://www.rigshospitalet.dk/RHenglish/Menu/