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あえて、超高齢社会の急性期医療を問う

2017年10月25日

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これまで自立した生活をしていた80代女性。

5月に肺炎を発症し入院。
食事が止められ3週間の点滴治療。
入院中に新たな誤嚥性肺炎を発症し、そこからさらに食止めと点滴治療が3週間続いた。
入院中に体重は14キロ減少し、歩行は困難に。入院前は普通に食事をしていたが、ペースト食での退院となった。

退院から2週間もたたない7月、再び肺炎にて入院。
やはり3週間の食止め・点滴、今回は入院中に経口摂取ができないと診断され、胃瘻が造設された。
経管栄養管理が始まったものの、退院後、1週間程度で再び誤嚥性肺炎を発症し、再入院。

3回の入退院を経て、在宅医療が導入された。
初診時にお会いした患者さんは、自発的な発語が難しく、四肢の拘縮も進行し、ほぼ全介助の状態になっていた。
アキネトンが投与されていたのは、2回目の入院時にパーキンソン症候群と診断されたためだが、最初の入院時にリスペリドンが開始される前までは特に自覚症状はなかったとのこと。少なくともこの状態では、いずれの薬も必要ないだろう。
典型的な医原性サルコペニアと服薬カスケード。残念ながら、彼女のようなケースは決して珍しくない。

急性期医療・入院医療は、命を救うための重要な社会機能である。
しかし、安静・禁食によるサルコペニア・低栄養の進行、リロケーションダメージによる適応障害・譫妄・認知症の進行など、「入院管理」という侵襲性が、高齢者の心身の機能や生活、そして人生に取り返しのつかない影響を及ぼす。

今日は100歳を超える僕の患者さんが、肺炎で入院していた病院から、変わらぬ姿で退院してきた。フレイルの超高齢者であっても、入院管理に配慮と工夫があれば、その侵襲を最小化できるのだ。
しかし、残念ながら、高齢者という脆弱な存在に適切に対処できる病院はまだまだ少ない。

高度急性期病院においても入院患者の大部分は高齢者。
高齢者の入院管理のあり方について、もう少ししっかりと議論し、改善に向けての具体的な取り組みを始めなければならないと強く感じる。

もちろん、在宅医療も、発症予防と早期発見・早期治療を確実に行い、入院が必要な事態を最小限に抑えなければならない。
そして、入院になった場合には、できるだけ早期に退院できるよう在宅療養サポート力を高めるとともに、病院にしっかり情報提供を行うとともに早期退院という目標、生活モデルという視点を共有する必要がある。

高齢化に伴い疾病構造は変化し、求められる医療のあり方も変化する。
高齢者のケアは在宅だけの仕事ではない。
急性期病院の優れた医療者の方々は、超高齢社会における新しい急性期医療のあり方についても、ぜひ世界をリードしてほしい。

佐々木淳
医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
プロフィール
筑波大学医学専門学群、東京大学大学院博士課程卒業。三井記念病院、医療法人社団 哲仁会 井口病院副院長等を経て、24時間対応の在宅総合診療を提供する医療法人社団 悠翔会を設立。