医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

台湾家庭医、その矜持に触れる①

2017年7月14日

このエントリーをはてなブックマークに追加

Lai先生は家庭医として開業され、在宅医療にも積極的に取り組まれている。中医師でもあり、台湾在宅医療学会の理事もなさっている非常に優秀なドクターだ。

先生はなんと、100名もの居宅の患者さんの在宅療養支援を担当されているとのこと。日本なら在宅クリニックとしては安定運営できる規模だが、台湾では在宅医療として一回4000円程度の往診料しか認められておらず(管理料の評価はまだない)、経営的にはとても厳しいとのこと。移動手段にコストがかけられないため、公共交通機関を使って訪問している。

最初に同行させていただいた方は老年症候群、排尿障害の93歳の女性。
自宅前で二人の訪問看護師と合流。
玄関では主介護者の息子さんとともに、イチローという名の柴犬が歓迎してくれた。
総義歯だが、下の義歯が合わず長いこと装着していない、柔らかいものしか食べられないが、市販の介護食は高いので何をどう調理すればいいのか、カテーテルが留置されているが、夜に熱が出たらどうすればいいのか、など、息子さんからはたくさんの悩みや不安の表出があった。

訪問診療をはじめ、訪問看護、訪問リハ、訪問歯科診療、訪問口腔衛生指導、訪問栄養指導、訪問服薬指導…さまざまな在宅サービスが制度として認められている日本の「豊かさ」を改めて再認識した。台湾ではこれらの仕組みはなく、現状、それぞれの専門職の熱意と知恵と工夫で乗り越えてきている。患者さんのニーズに応えたい、という真摯なスタンスに心からの敬意を感じた。
仕組みはあるのにまだまだ十分に活用できていない日本、本当に贅沢な悩みだなと感じる。
この女性は日本統治時代に日本の銀行で働いていたとのこと。流暢な日本語で対応してくれた。高齢者にとって、日本語は「懐古療法」としても使われているのだそうだ。

佐々木淳
医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
プロフィール
筑波大学医学専門学群、東京大学大学院博士課程卒業。三井記念病院、医療法人社団 哲仁会 井口病院副院長等を経て、24時間対応の在宅総合診療を提供する医療法人社団 悠翔会を設立。