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高齢国家の「自立支援」

2017年4月11日

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[参考:外部リンク]2065年度の人口推計 8800万人まで減少 (NHK NEWS WEB)

日本の人口は50年で約4000万人減少する。
高齢者数は変わらないが、社会を支える生産人口は40%も減少する。
数字だけ見れば危機的状況。
でも、これは対応可能な未来だと思うし、対応しなければならない。

まずは、年齢に関係なく働ける社会環境を作り、生産人口の減少を補うこと。
前期高齢者の多くは元気だし、気力と体力に応じた活躍の場があれば「現役」を続けられる人は少なくない。仮に心身の機能に何らかの障害が生じても、就労環境や制度面のバリアフリー化を進めれば、社会の支え手であり続けることもできるはずだ。地域包括ケアシステムを単なる医療介護供給体制ではなく、ユニバーサルな街づくり・コミュニティづくりとはっきり定義して、政策も整合性をとるととともに、健康寿命の価値観をICD、ICIDHからICFに明確にシフトすることで日本は超高齢社会のトップランナーであり続けることができると思う。
そのために、医療の主軸は治療医学から予防医学へ、同時に患者を客体から主体へ活性化するとともに、高齢者に最適化した医療が提供できるよう医学教育や医療提供体制、そして「地域」との関係性も見直していく必要があると思う。介護は自立支援の意味をしっかりと問い、制度的に支える側・支えられる側の境界線を作らないこと、そして専門性の確立と社会的評価の向上を並走させたい。

労働生産性も改善の余地が大きい。
日本の労働環境は、現場も制度も国際的に見ても非効率。労働政策をより柔軟に、加えてAiやロボティクスなどのテクノロジーを上手に活用すれば、労働力の不足を補って余りある飛躍的な生産性向上が期待できる現場も少なくないと思う。

海外の人にとっても暮らしやすい(働きやすい)環境を作ることも大切だと思う。
移民が増加し、日本の伝統的価値への悪影響を心配する声も多いが、空き家と高齢者ばかりの国に、現在の文化レベルや治安を守り続ける力があるのか、冷静に考えたほうがいいのではないだろうか。
そもそも現在の日本の文化も完全なオリジナルというよりはさまざまなDNAのハイブリッド。時代の流れに応じて、守るもの、変化していくもの、両方あってよいのではないかと思う。また、日本の伝統的価値が本当に素晴らしいものならば、それを発信していくためにも、単なる「観光」ではなく、留学や生活体験などで海外との人口対流を活性化してもいいと思う。

長い歴史の中で培われてきた日本の価値観と、戦後の経済成長の中で築き上げてきた1億3千万人分のインフラ。
そしてピークを過ぎて、成熟とともに高齢化していく国、日本。
出生率を上げる努力はもちろん必要だが、それが解にはなり得ないことを統計は示している。

これは日本という高齢国家の「自立支援」のプロセス。
持続可能でよりよい社会を実現するために、まずは避けられない未来から目を背けないこと。
そして、一番重要なのは、これが国レベルだけではなく、地域レベル、個人レベルでも、勇気をもって転換、取捨選択、投資をしていくことを進めていけるか、ということだと思う。

佐々木淳
医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
プロフィール
筑波大学医学専門学群、東京大学大学院博士課程卒業。三井記念病院、医療法人社団 哲仁会 井口病院副院長等を経て、24時間対応の在宅総合診療を提供する医療法人社団 悠翔会を設立。