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医療用医薬品のダークサイドを探る(後編)

2017年3月22日

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医薬品広告における暗黒面

医学論文ねつ造など臨床研究不正問題として取り上げられている「ディオバン事件」の判決が出ましたが、これも医薬品の暗黒面の象徴とも言えますね。

「えっ?なんで無罪なの?」と思われる方が多いので詳細は以下をご覧になってください。

 

[参考] “ディオバン問題” 一審判決 ノバルティス社ならびに元社員の双方「無罪」に

 

判決では、臨床研究データの意図的な改ざん、盗用の「特定不正行為」があったことは認めたが、医薬品医療機器等法第66条1項の誇大広告には当たらないとした。同法第66条で言及する「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布」とは、

(1)医薬品の購入意欲を喚起・昂進するもの

(2)特定医薬品の商品名が明らかにされている

(3)一般人が認知できる状態にあるもの

の3要件すべてを満たすものと裁判官が指摘した。

 

ここが司法の考える医療用医薬品の販売体制への理解が足りない部分とも言えますね。医療用医薬品は一般の医療消費者への直接広告が同法により禁止されているので、一般人・患者は欧米の一流医学誌に掲載された影響で医師がその薬をチョイスしているなどと知ることはできません。

当時は大規模臨床試験の結果が医薬品販売に与える影響が大きく、それは事実なのですがそれに対する適切な証明方法が無いといえば無い、ということも無罪ということに繋がっているのでしょう。

ただ、この事件がもたらしたのは医療現場における大混乱と、日本の臨床研究自体の相対的価値の低下であり、その損失規模はもはやお金では換算できないレベルです。

販売競争という製薬企業の宿命の中で絶対に手を出してはいけない「研究不正」および宣伝への利用と、一流誌への掲載で名を上げたい臨床研究者の暗黒面との葛藤の姿がここに見えるような気がします。

(編集部追記)東京地方検察庁は2017年3月29日、ノバルティスと元社員・白橋伸雄被告を無罪とした東京地方裁判所の判決を不服として控訴した

 

水八寿裕
ふくろうメディカル代表
薬剤師
東京理科大学薬学部
臨床准教授
プロフィール
1968年福島県郡山市生まれ。
高校卒業後家庭の事情等で医学部を目指すも学力不足により進学を断念。2浪の末1990年東京理科大学薬学部に入学。4年次に就活を試みるもバブル崩壊の影響で就活をストップし大学院へ進学(研究室に居残りという表現が正しい)。
なんとなく有機科学の薬学研究科修士修了。バブル崩壊の影響は2年後も続いており、渋い有機化学(当時はバイオ系が流行)専攻では製薬会社研究所の就職口が見つからずMRで就活すると一発で内定。武田薬品工業(株)にて10年MRとして勤務 その後薬剤師(薬局・大学病院・診療所)人材会社を経て現職。
*ふくろうメディカル:個人事業で医療関連の著作・研修資料作成などを行っています。