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その路を塞ぐものは何か

2017年1月18日

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以前から参加したいと思っていたACP看護研究会。
在宅ケア移行支援研究所の宇都宮宏子さんが主催するこの研究会では、訪問看護、病棟、退院支援、診療所・・・地域のさまざまな場所で活躍する看護師たちがつながり、ケースを時間軸で振り返りながら課題意識を共有している。
今回は地域公開講座という特別なプログラム。福知山市民病院・総合内科医長の川島篤志先生のご講演をお聴きして、改めてかかりつけ医の役割の重要性を認識した。

医者は興味の対象でない部分は診ていない。
急性期病院で、病院の中で完結する専門診療ならそれでもいいかもしれない。
だが、複数疾患を抱えている、加齢によりサルコペニアや低栄養、認知症など脆弱性を抱えている、生活能力や生活環境に課題のあるなどのケースにおいては、臓器の医者は患者さんを幸せにしない。そこは「かかりつけ医」の出番だ。

しかし、患者がある医師をかかりつけ医だと思っていても、医師の側がそう自覚していないケースは少なくない。逆に、自分がかかりつけ医だと思っている医師が、かかりつけ医としての使命を果たしていないケースもある。この医師と患者の認識のミスマッチが「困難事例」を生む。

特に「困難事例」が顕在化するのが入退院のタイミング。
かかりつけ医が患者の課題をきちんと整理していれば、入院の受け入れも、退院支援もスムーズにいくはずだ。
しかし、かかりつけ医を持たないケース、かかりつけ医が機能しないケースにおいては、本人の想いが治療プロトコールや病棟運営のフローにかき消され、入院を機に地域における生活や人生の連続性が絶たれてしまうこともある。

急性期病院の医師たちの多くは、地域と隔離された環境で、期間限定で働いている。
患者の生活に思いを馳せる、地域のリソースを把握して有機的につなぐ、などの役割を期待するのは現状では難しいのかもしれない。

臨床倫理の4分割表

を改めて見直す。

多くのケースは病院で完結できないはずだ。退院前カンファランスのような病院と地域(生活)をつなぐためのチャネルを、もっとフレキシブルな形で確保していく必要があるのだと思う。特に都市部は急性期病院や開業医であっても専門を標榜している医師が多く、総合的な診療対応能力を持つ「かかりつけ医」が絶対的に不足している。高齢者も臓器別に主治医を持ち、複数の医療機関を掛け持ちしている。これは、ポリファーマシーなどの直接的な弊害のみならず、いつか起こる「何か」が発生した時を考えても、非常にリスクの高い状態だと思う。適切なタイミングで総合的に診てくれるかかりつけ医を見つけ、少しずつ診療を集約していくべきだろう。

医師が行動変容を起こしていくのは容易ではないが、看護師のつながりがセーフティネットとして機能すれば、入院という大きなハードルを飛び越えた患者を、住み慣れた地域に軟着陸させてあげることができるのかもしれない。

私たちは在宅医療専門クリニックとして、多くの在宅療養患者さんの「かかりつけ医」を担当させていただいている。川島先生のお話をお聴きしながら、自らの役割をきちんと果たせているかどうかを反芻した。
また、かかりつけ医にとって在宅医療は標準装備の機能であるべきだが、現状、対応できていないかかりつけ医が多い。在宅専門医療機関として、この部分のサポートは、やはり積極的に行っていかなければならないと改めて感じた。

学びの多い週末となりました。
貴重な機会を頂戴しました関係者の皆様に心よりお礼申し上げます。

佐々木淳
医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
プロフィール
筑波大学医学専門学群、東京大学大学院博士課程卒業。三井記念病院、医療法人社団 哲仁会 井口病院副院長等を経て、24時間対応の在宅総合診療を提供する医療法人社団 悠翔会を設立。