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低栄養のスパイラルを防げ

2016年8月4日

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厚労省の懇話会に出席。
高齢者の栄養ケアについて提案をさせていただきました。

食事量低下→低栄養→筋量減少→運動機能低下→廃用症候群→そしてさらなる食事量低下・・・

食事量の低下から始まる負のスパイラル。
高齢者はこの「らせん階段」を下る途中で、転倒・骨折や誤嚥性肺炎などの疾病や障害を発症し、身体機能や認知機能を低下を加速させていきます。

できるだけ早い段階で、このスパイラルを逆回転させること。
キーとなるのは栄養ケアです。
要介護の手前、フレイルの段階で、そしてできればさらにその手前の段階で。介入が早いほうが、その効果も大きくなります。
しかし、現状、フレイルの方への栄養ケアはほとんど提供できていません。

高齢者の低栄養のリスクは一般にあまり認識されていません。食事が食べられなくなり、体重が減っていく。生理的な老化のスピードを上回る低栄養の進行の多くが「年のせい」として片づけられています。栄養ケアが提供できれば自立した生活が継続できる人が、肺炎や骨折で入院し、要介護度を上げていくことになります。
粗食がいい、玄米は身体にいい、など、断片的な知識も、栄養状態を悪化させる要因になっています。長年受けてきた「摂りすぎてはいけない」という栄養指導だけが一人歩きして、そもそも食事量が低下してしまっている高齢者の栄養状態をさらに悪化させているケースも少なくありません。高齢者世帯の食事の最後の頼みの綱、宅配食も栄養的にお粗末なものが目立ちます。

まずは低栄養に気づくこと。そして適切な栄養ケアにつなぐこと。
宅配食の改善も重要ですが、「たくさん食べられない、食品の多様性を確保できない」、そんな高齢者の栄養管理をアシストできるのが経口的栄養補助食品です。その人が必要としている栄養素を少ない消化管負荷で効果的に補充できます。
しかし、これらの多くは全額自己負担。経済的な理由から補助食品を使うことができない人が多く、結局、病気や障害が顕在化するまで待つことになってしまいます。

経口的栄養補助食品の中には、処方箋で出せるものもあります。
しかしバリエーションが非常に限られていますし、そもそも医療保険が使えるのは病気や障害が発生してからです。
栄養ケアの介入効果の高いフレイルの段階で栄養ケアを普及させるためには、このあたりに工夫が必要であるように感じます。

障害が起こってからのマイナスを補填するサービスも大切ですが、障害のリスクを下げる、QOLを向上するサービスももう少し充実させてもよいと思います。
フレイルに対する栄養ケアの費用対効果の検証も必要ですね。

佐々木淳
医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
プロフィール
筑波大学医学専門学群、東京大学大学院博士課程卒業。三井記念病院、医療法人社団 哲仁会 井口病院副院長等を経て、24時間対応の在宅総合診療を提供する医療法人社団 悠翔会を設立。