医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

地域包括ケアシステムと「予防」

2016年7月7日

このエントリーをはてなブックマークに追加


地域包括ケアシステムとは、リスクの高い群に対する医療介護連携が主であるというのが現場の多くの人たちの理解だが(実際、現時点での喫緊の課題であるということも間違いない)、将来を考えたとき、一番大切なのは「予防」という部分ではないかと思う。

2040年、2060年、日本が自立を続けるためには、生産年齢を後ろに伸ばす以外の現実的選択肢は少なく、それを支えるためにも、若年層に対する予防医学的アプローチを、いま始めなければならない。

そういった思いを抱きはじめたとき、日本プライマリケア連合学会理事の藤沼康樹先生が提唱なさっている「パネルマネジメント」の考え方に触れた。非常に納得できるものだと感じた。ケアマネジメント(在宅医療)を通じて自分たちが取り組んできた患者層の位置づけと同時に、リスクの相対的に少ない層に対するスクリーニングや予防的介入が十分にできていない現状を再確認する機会となった。

[参考]日本のプライマリ・ケア現場におけるPopulation Health Managementを構想する

現在、一般的な「かかりつけ医」の介入はリスクが相対的に低い群が中心だが、この群において本当に必要なのは、医療(治療)ではなく健康管理支援なのではないかと思う。1gの塩分制限が降圧薬治療よりも医療費抑制につながるというデータもある。

[参考]Projected Effect of Dietary Salt Reductions on Future Cardiovascular Disease (NEJM)

また日本でも長野県の例は有名であり、地域包括ケアシステムのモデルにもなりうるものだ。

[参考]長寿日本一長野県 秘密に減塩学習、「保険補導員」の存在も

[参考]脱!短命県「なぜ長寿?長野で調査」|NHK青森放送局

やりっぱなしの健康診断、患者の主体性を活性化しない生活習慣病治療、通院頻度に比例しない診療品質・・・これらの課題をクリアするためには、長期的な視野に立った、医療をセンターとしない健康管理支援の仕組みを作らなければならない。そしてそのキーは、まさに多職種連携なのだ。特にいわゆる一次予防のステージは医師よりも看護師、栄養士、保健師、理学療法士、作業療法士、臨床心理士、といった方々のほうが取り組みやすいし、医師はそれを後ろから支え、取り組みの医学的精度を高める縁の下の力持ちであればいい。サポートがしっかりしていれば、場合によっては担い手は一般の方でも構わないと思う。

住民を活性化する。そのために、まずは地域の多様な専門職を活性化する。医療者は患者を独占するのではなく、地域の触媒として機能すべきではないだろうか。

佐々木淳
医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長
プロフィール
筑波大学医学専門学群、東京大学大学院博士課程卒業。三井記念病院、医療法人社団 哲仁会 井口病院副院長等を経て、24時間対応の在宅総合診療を提供する医療法人社団 悠翔会を設立。